加工食品が人間にもたらす9つの影響
「加工食品が体に悪い」ということは誰しもなんとなく分かっていることだと思います。ではどのように体に悪いかご存知でしょうか?
人類の歴史上、食事の西洋化を受け入れ、加工食品を食べるようになった国の人々は、例外なくより肥満に、より不健康になっています。この変化は、加工食品を食べ始めて数年で表れると言われています。決して人間の遺伝子が変化しているのではありません。食べたものがそうさせているのです。
ここで「加工食品」の定義をはっきりさせておきたいと思います。「加工」とは誤解を招きかねない言葉です。当然のことながら、世の中のほとんどの食べ物は、人間の口に入るまでに多かれ少なかれ何らかの「加工」をされます。例えば、りんごは木から取って食べます。挽肉とは動物の肉を機械でミンチにしたもので、バターとは牛乳からクリームを分離して撹拌し固めたものです。
しかし、「機械的処理」と「化学的処理」には大きな違いがあります。他に何も添加されていない一種類の原料であれば、それがすりつぶされようが、そのまま瓶に詰められようが大した問題ではありません。それは自然な食品です。一方、何らかの化学的な処理をされた食品、あるいは精製加工された原料や人工的な物質から作られた食品のことを、一般的に「加工食品」と呼びます。
加工食品がいかに体に悪いか、よくお読みください。
加工食品には大量の糖分が含まれる
甘い味の加工食品には、多くの場合恐ろしい量の砂糖、もしくはその邪悪な双子である「異性化糖(HFCS)」が含まれています。砂糖を摂り過ぎると体によくないことは改めて説明するまでもないでしょう。一つには、砂糖には糖質以外の栄養素がまったくと言ってよいほど含まれていないということで、こういった食べ物のことは「エンプティ(空の)カロリー」と呼ばれています。
しかしながら、それは砂糖の悪影響全体から見たらほんの小さな話。もっと恐ろしいことは、砂糖は見た目のカロリー以上に代謝機能に悪影響を与えるということです。具体的には、中性脂肪の増加、悪玉コレステロールの増加、ひいてはインスリン抵抗性(インスリンが正常に働かなくなった状態)の発生などを引き起こします。実際に、砂糖の摂取は、心臓疾患、糖尿病、肥満、がんと密接な関係があるという研究結果があります。
そんなに多くの砂糖をいったいどこから摂っているのか?決してコーヒーに入れている砂糖ではありません。人々は砂糖の大部分を、加工食品や清涼飲料水から摂取しているのです。
加工食品は食べ過ぎるようにできている
人間は誰しも美味しいものを食べたいと思っています。それは人間の本能です。
人類の進化の過程で、人間は「味蕾(みらい)」という、舌や軟口蓋にある食べ物の味を感じる器官を手に入れました。人間の食欲は、甘いもの、塩辛いもの、脂肪のあるものに惹かれるようにできています。なぜなら、これらは人間が生き残るために必要なエネルギーと栄養が含まれているからです。
当然のことながら、食品メーカーが自社の商品を選んでもらうためには、人間が美味しいと感じるものを作らないといけません。しかしながら今日、その競争は過酷であり、多くのメーカーが似たような商品を作っています。各食品メーカーはその競争を勝ち抜くために莫大な資本をつぎ込んでいます。
そこで、多くの加工食品は、ヘルシーな自然界の食べ物を上回るくらいに、脳の中枢である「脳内報酬系」を刺激し、脳が快感や満足感を得られるように作られています。
人間は、どれだけ食べてどれだけ消費すれば適正かというエネルギーバランスを計算する複雑なシステムを、体や脳の中に持っています。実は、人間が「肥満」するようになったのは人類の歴史上のごく最近のことです。
しかし、加工食品に含まれる刺激は、人間が生まれながらにして持っているそのシステムを素通りし、人間が必要としている以上に食べてしまうよう仕向けるのです。悪くすると、健康を害するまで食べてしまうということすらあります。これについては多くの研究結果があります。
加工食品にはありとあらゆる人工的化合物が含まれている
加工食品の成分表示ラベルをよく見てみてください。そこには、どんなものか見当もつかないようなカタカナの成分が記載されていることがほとんどです。これらは、さまざまな目的のために加えられた人工的な化合物です。
例えば、以下は低カロリー・低糖質を売りにしている某ゼリーの成分表示です。体によいとされているものにも、多くの人工的な化合物が含まれていることがよく分かると思います。
加工食品には多くの場合以下が含まれています。
- 保存料:食品の腐敗を防ぐ化合物
- 着色料:食品に特定の色をつける化合物
- 香料:食品に特定の風味をつける化合物
- 食感素材:食品に特定の食感をつける化合物
また、あまり知られていないことですが、加工食品には、ラベルに記載されない化合物も多数あることに注意してください。
例えば、「人工香料」は、各社が独占所有権を持ちます。食品メーカーはそれが実際にどんなものか開示する必要はなく、複数の化合物の組み合わせであることがほとんどです。成分表示ラベルに「人工香料」と書いてあったら、10やそこらの化合物が含まれていると思ったほうがよいでしょう。
もちろん、これらの化合物は基本的には食品検査に合格しているものです。しかしながら、検査機関がいまだに砂糖やサラダ油を安全と見做していることを考えると、こうしたお墨付きは鵜呑みにするべきではありません。
加工食品は依存症を引き起こす
加工食品は、脳の「報酬系」を刺激することによって、人間が食べ過ぎるように仕向けていると前述しました。このことは、一部の人にとってはさらに深刻な問題となります。
それは「依存症」です。まだ世間での認知度は低いかましれませんが、食べ物の依存症は非常に大きな問題になりつつあります。中には、どんなにやめようやめようと思ってもジャンクフードを食べるのをやめられない人が非常に多くいるのです。
食事を摂ると、人間の脳では多少なりともドーパミンと呼ばれる快楽物質が分泌されます。しかしこういった人々の場合、加工食品を食べることによってドーパミンがあまりに大量に分泌され、脳が完全に麻痺した状態になります。
このことは多くの研究で明らかになっています。砂糖や一部のジャンクフードは、薬物と同様に、脳内の「報酬系」を刺激することによって、依存症を引き起こすのです。
加工食品には含まれる糖質は精製加工されている
ダイエットにおける糖質が近年大きな話題になっています。糖質の是非については、主要なエネルギー源だとする意見と、諸悪の根源だとする意見と、専門家の間でも意見が割れています。
しかし一つ確実に言えることは、糖質を摂るのであれば、精製加工した糖質よりも、丸ごとの自然な食品に含まれる糖質を摂ったほうがはるかに体に良いということです。加工食品は概して糖質が高いですが、その糖質は精製加工したものであるということに注目してください。
大きな問題は、精製加工した単純な糖質は、体内ですぐに分解・吸収され、血糖値とインスリン値の急上昇をもたらすということです。そうすると、体は数時間するとまた空腹を感じて糖質が欲しくなります。この現象は「血糖値のジェットコースター(blood sugar roller coaster)」と呼ばれています。これは、低糖質ダイエットが優れているとされる一つの大きな根拠となっています。
また、多くの研究で、精製した糖質の摂取が、さまざまな生活習慣病やその他の健康への悪影響をもたらすことが明らかになっています。
一つ是非注意してほしいのは、「全粒粉使用」と書かれているシリアルなどの加工食品です。たしかに全粒粉自体は体に良いものですが、そういったものに使われている全粒粉はたいてごく細かく砕かれていて、精製した穀物とほとんど変わらない状態になっています。
糖質を摂るのであれば、なるべく加工食品ではなく、単一の自然な食物から摂るように心がけてください。
加工食品は栄養価が低い
加工食品は、自然な食品と比べると、栄養価が極めて低いです。
場合によっては、加工の過程で失われたビタミンやミネラルを補うために、人口のビタミン・ミネラルが加えられることがあります。しかし、これらの栄養素が自然な食品に含まれるものと同じと思ってはいけません。
自然な食品には、ビタミンやミネラルなどの馴染み深い栄養素以外にも、さまざまな体に良い栄養素が含まれています。野菜や動物の肉には、現代科学がようやく把握できるようになったものも含め、数千もの栄養素が含まれると言われています。
もしかしたら将来的には、こうした全ての栄養素の代替品となるような人口栄養素が発明されるかもしれません。しかしそれまでの間は、必要な全ての栄養素を摂る唯一の手段は加工されていない自然な食べ物を食べることです。加工食品を多く食べれば食べるほど、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質等々、体に必要なさまざまな栄養素が不足すると思ってください。
加工食品には食物繊維が少ない
食物繊維、特に水溶性(発酵性)食物繊維は、体にさまざまなメリットをもたらします。
その一つが、最近日本でも話題になっている「プレバイオティクス」で、腸内で善玉菌にエサを与えてくれます。
また、食物繊維は糖質の吸収をゆるやかにし、より少ないカロリーで満腹感を得る効果があります。さらには、便秘を解消する効果もあります。
食物繊維は自然の食品には豊富に含まれていますが、加工食品では多くの場合製造の過程で意図的に取り除かれます。加工食品は食物繊維が少ないと思って間違いありません。
加工食品は食べるときのカロリー消費が少ない
食品メーカーが加工食品を作るにあたってはさまざまな工夫をしています。例えば、なるべく「日持ちするようにする」あるいは「質量のバラつきを少なくする」といった工夫がありますが、その他にも「食べやすくする」という工夫があることに注目してください。
具体的に言うと、加工食品はほとんどの場合、噛むのも飲み込むのも楽にできています。中には、口の中で溶けるものすらあります。これは、食物繊維が取り除かれ、さまざまな成分が精製・加工・分離されているからです。
その結果、人間が食べて消化するのにエネルギーをあまり必要としなくなっています。
言い換えると、自然な食べ物と比較したときに、私たちはより少ない時間でより多くの加工食品(当然カロリーもより多い)を食べることができ、逆に消化するときに消費されるカロリーはより少ないのです。
一つの興味深い実験結果があります。17人の健康的を男女を対象に、加工食品と未加工の食品を食べた後でカロリー消費がどう異なるかを調査したものです。この実験では、被験者は、雑穀パンとチェダーチーズのサンドイッチ(未加工食品)か、白いパンとプロセスチーズのサンドイッチ(加工食品)のいずれかを食べました。
その結果、未加工食品を食べたグループは、加工食品を食べたグループよりも2倍のカロリーを消費していました。
食べたときにどのくらいカロリーが消費されるかを示す指標として、「TEF(食事による熱産生)」というものがあります。TEFは人間の総消費カロリーの10%を占めると言われています。つまり、人間は食べながらにして10%ものカロリーを消費しているのです。
この実験の結果からは、加工食品を食べた人はTEFが半分になっていると言えます。これが積もり積もったら当然肥満につながることは言うまでもありませんね。
加工食品にはトランス脂肪酸が使われている
多くの加工食品には体に悪い油がたっぷり使われています。安い粗悪な脂質や、加工した種や野菜などを「水素化」して作った油で、これらがいわゆる「トランス脂肪酸」です。
その代表格が「サラダ油」ですが、多くの人はこれを日々過剰に摂取しています。サラダ油に含まれる脂質は「オメガ6脂肪酸(リノール酸)」と呼ばれ、人体の酸化や炎症(※アレルギーの原因とされる)をもたらすことが分かっています。
また、この手の油を過剰に摂取すると、日本で死因の第2位である心臓病の発症リスクが劇的に高まることが複数の研究で報告されています。
また「水素化」について前述しましたが、この水素化という処理に大きな問題があります。これは液体の油に水素を加えることで常温でも固体になるようにする人工的な処理で、いわば自然の油を奇形させることを意味します。こうして作られる油、即ちトランス脂肪酸は、あらゆる物質の中で最も人体に有害な物質であるとの研究もあります。
トランス脂肪酸を避ける一番簡単な方法は、加工食品を食べないことです。食用油を使う場合は、バター、ココナッツオイル、オリーブオイルなどの自然な油を使いましょう。