たんぱく質について知っておきたい6つのこと
食べ物から摂れるたんぱく質は、筋肉、血管、骨など体のありとあらゆる細胞を作ってくれる大事な存在です。しかもそれだけでなく、脂肪燃焼や疲労回復のサポートをしてくれるなど、とにかくありがたいもの。とはいえ、せっかく摂ったたんぱく質を十分に活かすには、摂取のタイミング、食材のセレクト、摂取量などがとても重要です。たんぱく質の奥深さを知って、効果的に強く美しい体を作りましょう。
体重の20%はたんぱく質
個人差はありますが、人間の体の約20%は体脂肪です。つまり体重の20%は体脂肪ということなのですが、同じくたんぱく質も体重の20%を占めています。つまり体重50kgの人なら、50×0.2=10kgはたんぱく質ということになります。一つ補足すると、ここで「筋肉」ではなく「たんぱく質」と言ったのは、「筋肉」には水分が含まれているからで、正確に言うと「たんぱく質=筋肉」ではありません。「筋肉から水分を除いたもの=たんぱく質」です。
筋肉の表面にあるアウターマッスルは、体型の輪郭を作り、ボディデザインを決めています。その上筋肉は体脂肪よりも比重が重たく、同じ重さなら体脂肪よりコンパクトなので、体脂肪が落ちて筋肉量が増えると体は引き締まります。つまり引き締まった体を作りたいと思ったらたんぱく質は不可欠なのです。
骨もたんぱく質からできている
たんぱく質=筋肉を作る素材というイメージが強いと思いますが、実は骨の40%もたんぱく質からできています。こう言うと「骨を作るのはカルシウムではないのか?」と疑問に思う人もいるかもしれません。簡単に言うと、骨はカルシウムとたんぱく質との合成できているのです。
もう少し具体的に言うと、骨は建物の柱などに用いられる「鉄筋コンクリート」のような作りをしています。「鉄筋」の役割を果たすのが、コラーゲンという繊維状の太いたんぱく質と、オステオポンチンなどの非コラーゲンのたんぱく質で、その周りに「コンクリート」のような役目を担う、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが固く付着しているのです。もしたんぱく質がないと、骨は鉄筋が少ない柱のように脆くなります。
たんぱく質は20種類のアミノ酸でできている
たんぱく質は、体の中では20種類もの「アミノ酸」が一列に連なった状態で構成されています。実は、食べ物から摂ったたんぱく質は、たんぱく質としてそのまま吸収されるわけではなく、消化器の中でいったんアミノ酸に分解されて、体の中で再びたんぱく質に合成されるのです。また逆に体のエネルギーが足りなくなってくると、体は筋肉をアミノ酸に分解してエネルギーに変えようとします。
人間の体はうまくできていて、多少摂取する栄養素が足りなくても、体の中にある他の栄養素から作りだす機能を持っています。例えば、脂質は糖質から作ることができますし、糖質は脂質とアミノ酸から作ることができます。しかしたんぱく質だけは自由に作りだすことができないということに注意してください。なぜなら、この20種類のアミノ酸のうち、11種類のアミノ酸は、糖質や他のアミノ酸から作ることができるのですが、「必須アミノ酸」と呼ばれる9種類のアミノ酸だけは、どうやっても体内で作り出すことができないからです。つまり、必須アミノ酸は毎日の食事から取り入れる必要があります。必須アミノ酸は、肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆食品の5つの食品群に豊富に含まれます。
たんぱく質のカロリーの30%は食べているうちに消費される
食べて「カロリー」になるのは、糖質、脂質、たんぱく質の3大栄養素です。摂取したカロリーの一部は、燃焼して熱に変わりますが、これを「食事誘発性熱産生(DIT)」と呼びます。このDITには2つの側面があり、「消化吸収するときに発生する熱」と「食事によって交感神経が刺激され全身の代謝がアップすることによって発生する熱」があります。
興味深いことに、このDITの大きさは3大栄養素で差があり、糖質は5~10%、脂質は3~5%ですが、たんぱく質は20~30%にもなります。言い換えると、たんぱく質は食べながらにしてそのカロリーの20~30%は熱となって消費されてしまうのです。まさにダイエットの味方のたんぱく質。日本人の平均的な食事ではDITは10%程度と言われています。日々の食事にもっとたんぱく質を取り入れてDITを上げ、食事のカロリーを熱に変えてしまいましょう。
1日に体重1kg当たり1gのたんぱく質を摂ろう
人間の体内にあるたんぱく質は、常に分解と合成を繰り返しています。一部はリサイクルされ新しいたんぱく質に生まれかわりますが、1日70g前後のアミノ酸は、活動エネルギーとして燃焼したり、腎臓から排泄されたりすることによって体内から失われます。そこで、この不足分を補うために毎日食事から70g程度のたんぱく質を摂らなければなりません。厳密に言うと、そのたんぱく質の量は体の大きさで変わり、「体重1kg当たり1g」が目安となります。体重50kgの人なら50gです。
ただし、もし筋トレで筋肉を増量させようとしている場合は、それ以上のたんぱく質が必要です。これは、筋トレをするとたんぱく質の分解を上回る合成が起こり、それだけ材料となるたんぱく質が必要となるからです。「アメリカ栄養学会では、筋肉作りには体重1kg当たり1.4~1.8gのたんぱく質の摂取を薦めています」(立命館大学スポーツ健康科学部・藤田聡教授)。つまり、体重50kgの人なら70~80gということになります。以下は高たんぱく・低脂肪の食品の例ですので、是非参考にして推奨量のたんぱく質の摂取を目指してください。
●100g当たりのカロリー/たんぱく質量
食品 | カロリー(kcal) | たんぱく質量(g) |
---|---|---|
和牛肉もも(赤身) | 191 | 20.7 |
豚肉肩ロース | 157 | 19.7 |
ロースハム | 196 | 16.5 |
若鶏胸肉(皮なし) | 108 | 22.3 |
サバ | 202 | 20.7 |
シロサケ | 133 | 22.3 |
クロマグロ(赤身) | 125 | 26.4 |
ツナ缶(水煮) | 71 | 16.0 |
スルメイカ | 88 | 18.1 |
エビ(ブラックタイガー) | 82 | 18.4 |
木綿豆腐 | 72 | 6.6 |
高野豆腐 | 529 | 49.3 |
大豆(茹で) | 180 | 16.0 |
ヨーグルト(全脂無糖) | 62 | 3.6 |
カッテージチーズ | 105 | 13.3 |
鶏卵(全卵、生) | 151 | 12.3 |
たんぱく質は筋トレ後1時間以内に
食事を減らすだけでも痩せることはできますが、そうなると筋肉が落ちるので貧相で見栄えの悪い体になってしまいます。より早くより美しいボディを作りたいと思ったら、栄養補給と併せて筋トレをするのが望ましいです。筋トレだけでも筋肉はつきますが、筋トレ後に「たんぱく質」と「糖質」を摂ると筋肉の合成速度が跳ね上がり、効果的に筋肉を作ることができます。「たんぱく質は分かるけど、糖質も必要?」と思うかもしれません。実は、糖質を食べることによって分泌されるインスリンには、筋肉にアミノ酸を運び、筋肉の合成を助ける働きがあるのです。
摂取のタイミングも重要です。「筋トレ後1時間」でたんぱく質の合成速度はピークに達します。この「1時間」は「ゴールデンタイム」と言われるほどのベストタイミングです。なるべく筋トレ後一時間以内にたんぱく質と糖質を摂るようにしましょう。とは言え、筋トレ直後に食事をするのは大変かもしれません。そんな場合はプロテインシェイクでたんぱく質を補給するのも非常に有効です。またゴールデンタイム以降も、筋トレ後48時間は筋肉の合成は続きます。筋トレの翌日や翌々日の食事も疎かにせず、たんぱく質リッチな食事を心がけましょう。