むずむず脚症候群ってどんな病気?症状・原因・治療法とは
「むずむず脚症候群」は、医学的な正式名称としては、「レストレスレッグス(落ち着かない脚)症候群」または「下肢静止不能症候群」と呼びます。脚にひどい不快感を感じて眠れないほどむずむずし、長期に及ぶ場合、睡眠不足や集中力の低下を招いてしまうでしょう。また、不眠によって強い不安やうつ病、高血圧など循環器系の病気になる危険もあります。ここでは、そんなむずむず脚症候群の症状・原因・治療法について詳しくご紹介します。
むずむず脚症候群の症状とは?
むずむず脚症候群の症状は、一言で言うと、脚に不快感・違和感があって、じっとしていることができないということです。逆に、脚を動かしたり歩いたり、マッサージしたり叩いたりすると症状は軽くなります。
また、むずむず脚症候群の約5~7割の患者にみられるのが、「周期性四肢運動」と呼ばれる脚のピクつきです。夜中に何度も脚がピクッとするため、眠りが浅くなり、何度も目が覚めてしまうこともあるでしょう。その他、むずむず脚症候群で見られる症状には以下のようなものがあります。
- むずむずしたり、脚に虫が這っている感じがする
- ほてりやだるさ、痛みや痒み、うずきやひきつる感じがある
- チリチリ、ズキズキする
- 脚の中に手を入れて掻きたくなったり、脚を切ってしまいたいと感じる
- 足踏みしていないといられないと感じる
また、むずむず脚症候群で生じる脚の不快感は、椅子に座ってじってしているときにも起こりますが、特に夜に症状が強くなる傾向があります。具体的には以下のようなことを訴える患者さんが多いようです。
- 日中仕事をしているときはそれほど気にならない
- 夕方以降、特に寝るときに脚の奥の方に感じるむずむずとしたかゆみがあって、なかなか眠れない
- 最初はあまり気に留めないが、眠れない日々が続いて夜になるのが怖くなってしまうほどになる
- 不眠が日中の生活に支障を与える
むずむず脚症候群の原因とは?
むずむず脚症候群の原因は大きく2つに分けられます。特別な原因がない一次性(特発性)と、他の何らかの病気や身体的な条件がある二次性のものです。いずれについてもまだ研究途上であり、詳細については明らかになっていないことも多いですが、二次性のむずむず脚症候群については、以下の二つが代表的な原因とされています。
ドパミン調整機能障害
ドパミン(ドーパミン)は神経伝達物質の一つです。ドパミンはいくつかの細胞群から成り立っており、その中の一つ「A11神経細胞」には、不要な刺激を脳に伝えないようにブロックする働きがあります。ドパミンを調整する機能がうまく働かないと、脚から湧き上がってくる不快感を脳が抑えられず、脚を動かさずにはいられなくなります。
鉄欠乏症
脳内でドパミンを作るときに必要なのが鉄分です。鉄分が不足すると、ドパミン機能の調整もうまくいかないため、脚がむずむずするといった不快感を感じます。むずむず脚症候群は女性に多い病態ですが(男性の1.5倍)、これは、女性の方が鉄欠乏症が多いことが関係しているのかもしれません。特に60~70歳代に最も多く、妊娠中の女性も多く発症しています。
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むずむず脚症候群の治療法とは?
むずむず脚症候群は、大きく分けて2つの治療法があります。非薬物療法と薬物療法です。日常生活に支障をきたしていない場合、薬の服用は必要ありません。むずむず脚症候群の薬物療法は効果が高く、患者の90%は症状が緩和しますが、完全に治る根本的な治療ではありません。あくまでも薬によって症状を抑える治療になります。まずはなるべく薬物療法には頼らず、日常生活の改善や工夫を積極的に行うことで、症状を軽減していきましょう。
非薬物療法
非薬物療法の対象となるのは、薬物療法の必要がない軽度の場合です。治療法としては、脚のマッサージをすることや、日中に適度な運動をすること、安定した睡眠をとること、食生活を見直すことなどが挙げられます。食事については、鉄分を多く摂るように心がけましょう。アルコールやカフェインは症状を悪化させることがあるので避けてください。
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また、もしむずむず脚症候群を引き起こす原因となる病気にかかっている場合、慎重に対処する必要があります。例えば、鉄欠乏症や腎機能障害、末梢神経障害やパーキンソン病などです。その他、妊娠中の場合や、ドパミン阻害薬や抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など、むずむず脚症候群の要因となる薬を服用している場合も同様です。場合によっては、原因となっている病気の治療の中止や、薬の減量・中止が必要になることもありますので、主治医と十分に相談しましょう。
薬物療法
薬物療法の対象となるのは、軽症でも一時的に症状が強く出ている場合や、非薬物療法だけでは症状が緩和しなかった場合、あるいは症状が中等度以上と判断される場合です。服用する薬物には、ドパミン受容体作動薬(プラミペキソールなど)やドパミン製剤(L-ドーパなど)、オピオイド製剤や抗てんかん薬、鉄剤などがあります。処方する薬は、患者の持病を考慮して、症状に合ったものが選ばれます。
薬物療法は、基本的に長期にわたる薬の服用が必要なため、効果の得られる最小限の用量を継続的に服用することになるでしょう。症状の出方には個人差があり、季節によっても症状の強さが変わることがあります。患者に多いのは「冬は日常生活の改善や工夫で支障ない程度の症状なのに、夏は薬なしではいられない」というケースです。その場合も、医師と相談しながら、症状の出方に合わせた薬を服用することになるでしょう。