便秘を招く意外な13の原因
多くの方が悩んでいる便秘。特に便秘は女性に多く、女性の2人に1人は便秘に悩んでいるという調査もあります。では便秘はなぜ起こるのでしょうか?おそらく最もよく知られた原因は「食物繊維の不足」ですが、その他にも「行きたいときに行かない」「水分不足」「運動不足」などは比較的よく知られた原因です。しかし、それだけではありません。ここでは、あまり知られていない便秘の原因をご紹介します。是非便秘解消に役立ててください。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能が低下すると、体の代謝が低下し、腸の動きも悪くなります。もちろん甲状腺機能低下症の方がみんな便秘というわけではないですし、逆に便秘の方がみんな甲状腺に異常があるわけでもありませんが、甲状腺と便秘の関係に注目している医師は少なくありません。「私はひどい便秘の若い方を診察するときは、甲状腺ホルモンの検査も併せて行うようにしています」(医学博士・ハーバード大学医学大学院助教授・カーラ・H・ギンズバーグ氏)
鎮痛剤
鎮痛剤、特に麻酔薬は便秘を起こすことで知られています。「鎮痛作用に関わる多くの受容体は消化管の中にあります。よって鎮痛作用のある薬を服用または投与すると、消化活動が減退または停止することがあります。こういった薬を処方する場合は、便軟化剤など軽い便秘薬を併せて処方するのが一般的です」(医学博士・ロチェスター・メディカル・センター・胃腸科専門医・トーマス・パーク氏)
ある研究では、アスピリンやイブプロフェンなどの鎮痛剤を慢性的に服用すると便秘になる恐れが高いと報告されています(異論もあり)。
チョコレートの食べ過ぎ
「チョコレートは便秘を引き起こすという研究結果があります(逆に、便秘を改善させるという研究結果もあります)。」(パーク氏)。2005年に行われた研究では、慢性便秘または過敏性腸症候群の人は、そうでない人に比べて、その原因としてチョコレートがその原因と自己分析する人が多くいました。心当たりのある方は、チョコレートを食べる量を減らしてみてはいかがでしょうか。尚、その研究では、チョコレートの他にバナナや紅茶なども原因の候補として挙げられています。
鉄分・カルシウム
意外に思うかもしれませんが、カルシウムや鉄分の摂り過ぎは便秘を引き起こすことがあります。「私は自分の患者さんには、鉄分やカルシウムのサプリメントは特別な必要がない限り摂らないように勧めています。もし摂る場合は便軟化剤を処方します」(ギンズバーグ氏)
便秘薬の飲み過ぎ
便秘薬の作用の仕方はそれぞれに薬によって若干異なりますが、中には腸の活動を刺激することによって作用するものがあります。この手の便秘薬は、あくまで指示通りに服用するようにしてください。長期間服用した場合、依存性が生じて、薬なしでは正常なお通じができなくなる恐れがあります。このような便秘薬の例としては、Dulcolax(ドゥルコラックス), Ex-Lax(エックスラックス), Senna(センナ)などが挙げられます。
便秘薬を含め、どんな薬も必ず指示を守り、指示された以上の期間服用し続けることのないようにしてください。
乳製品の摂り過ぎ
チーズ、卵、肉など、高脂肪で食物繊維が少ない食べ物は消化作用を鈍くします。便秘がちの人はこれらの食べ物をなるべく減らし、逆に食物繊維豊富なものを多く食べるようにしてください。
「チーズや赤身肉、卵を食べる場合は、サラダなど食物繊維が多く含まれるものと一緒に食べるのがおすすめです。また、ファーストフードや加工食品は概して食物繊維が少なめなのでなるべく避けたほうがよいでしょう」(パーク氏)
抗うつ剤
抗うつ剤の一種であるプロザック(フルオキセチン)などの「選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) 」は、便秘の副作用があることで知られています。
「便秘に関しては、どちらかと言えばエラビル(アミトリプチリン)などの三環系抗うつ剤のほうが副作用は大きいです。なぜこのような副作用があるかは明らかになっていません」(パーク氏)。抗うつ剤を服用している方は、便軟化剤の服用を検討してみてもよいでしょう。
うつ病
皮肉なことに、その抗うつ剤が治す病気であるうつ病もまた便秘を引き起こします。うつ病は、前述の甲状腺機能低下症と同様、体の全体的な処理を鈍くさせるので、腸の活動にも悪影響を及ぼします。
「過敏性腸症候群とうつ病は医学的に密接な関係があり、過敏性腸症候群を患っている人も便秘になりやすい傾向があります」(パーク氏)
制酸剤(胸やけの薬)
「制酸剤は、胃酸を中和し胸やけを和らげてくれる薬ですが、中には便秘を引き起こすものがあります。特にカルシウムやアルミニウムを含むものはその傾向が強いです」(パーク氏)
幸いなことに制酸剤は種類が豊富で、薬局にもさまざまなタイプの薬があるはずです。便秘がちの方は、便秘になりにくいものを選ぶようにしましょう。
また、そもそも胸やけにならないよう、日頃から食べ過ぎ飲み過ぎをしないように心がけることも重要です。脂肪の多いものを減らして、食物繊維を多く摂れば、胸やけも便秘も両方解消することができます。
高血圧とアレルギーの薬
カルシウム拮抗剤や利尿薬などの高血圧の薬も便秘の副作用があります。
例えば利尿薬の場合、尿を排出することによって血圧を下げますが、それはつまり体から水分がなくなっていくことを意味します。水分は便を軟らかくし、体の外に出すことを助けてくれるものですので、水分が不足すると便秘になるのです。
アレルギー症状を和らげる抗ヒスタミン剤も同様の副作用があります。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)には、クローン病と潰瘍性結腸炎という二つの慢性疾患があります。これらは、けいれん、体重の減少、血便などさまざまな症状を引き起こします。慢性下痢もよく知られた症状の一つですが、面白いことにその逆の症状である便秘も引き起こすことがあります。
便秘は、潰瘍性結腸炎においては直腸に炎症があるサインであり、クローン病においては小腸閉塞のサインとなります。しかし、上記のような関連症状がないただの便秘の場合は、炎症性腸疾患とは無関係の可能性が高いです。
妊娠・出産
便秘は妊娠中によく見られる症状の一つです。しかし、妊娠・出産自体が問題というよりもむしろ、腹筋の働きが弱い、または鎮痛剤をや麻酔薬を服用しているということが問題と考えられます。
「また、出産後は会陰部に痛みがあるので、力を入れにくいことも便秘を招く大きな要因と言えるでしょう」(パーク>氏)
あるいは、ごく稀ではありますが、分娩時の裂傷によって神経が損傷し、便秘を引き起こすこともあります。
糖尿病・神経変性疾患
「糖尿病の症状のひとつとして神経障害があり、これが食べ物の消化能力に影響を与えることがあります」(パーク氏)。「既に糖尿病にかかっている人はたいていそのことを知っています。逆に、ひどく便秘がちの方は糖尿病の検査を受けることをおすすめします」(ギンズバーグ氏)
多発性硬化症やパーキンソン病などの神経変性疾患もまた便秘を引き起こすことがあります。「ただし、神経変性疾患の場合の便秘は、排尿障害、複視、歩行障害など他の症状と併せて現れるので比較的分かりやすいです」(ギンズバーグ氏)