ランニングを始める前に知っておきたい3つの心得
路上、公園、トレッドミルを含め、ランニングは世界で最もポピュラーな運動と言ってよいでしょう。減量やシェイプのためにランニングをしたいと思っている方も多いと思います。ランニングは、1km当たり約60kcalを消費することができて、しかも骨を強くします。膝に悪いのではないかと思っている人もいるかもしれませんが、実は逆に関節炎のリスクを減らす効果があります。また、デンマークの研究では、1週間に1.5~2時間に適度なペースでランニングをする人は6歳長生きすると報告されています。健康に良いだけでなく、ストレス解消の効果もあり、また目標を設定することで生きがいにもなります。
「”今日はいつもより数分長く走った”、”休まずに急な坂を上り切ることができた”、あるいは、”前回より心が折れずに走れた”等々、ランニングする度にいつも新しい何かを得ることができます」(アトランタ市ランニングコーチ・カール・リーバース氏)
そんな素晴らしいランニングですが、残念ながら長続きしない人が多いのも事実です。楽しさを見いだせない、体のどこかが痛む、肺が苦しい等々、さまざまな理由がありますが、これは多くの場合、テニスやスポーツなどの他のスポーツと違って、ランニングはその技術やコツを学ぶ機会がないのが原因です。ランニングは、ただスニーカーを履いて足を交互に踏み出すというような簡単なスポーツではありません。
この記事では、アメリカ国内で広く活躍するランニングの専門家たちが語る、初心者がランニングでつまずかない、あるいはより成果をあげるためのアドバイスをご紹介しています。ほとんど走ったことがないという方にとっても、5kmからハーフマラソンにステップアップしたいという方にとっても、これらのアドバイスはきっと役に立つでしょう。
自分のペースで走る
皆さんは走るということがどんなことがなんとなくは分かっていると思います。しかし実はどのくらいのスピードで走るのが適切かということを最初から正しく理解している人はほとんどいません。適切なスピードというのは、例えばどのくらいの距離を走るのか、健康状態はどうなのか、体力レベルはどの程度なのか、等さまざまな要素によって異なるもので、長い時間をかけて初めてものにできる一つのスキルと言えます。オリンピッククラスのランナーでさえ、適切なスピードを探すのには苦労すると言われています。
ランニング初心者は速く走り過ぎ、途中で燃え尽きる傾向があります。「ジョギングと違い、ランニングでは、走るスピードについて頭でよく考えることが重要です」(ダラス市 Run for Speed代表・ブランドン・T・ヴァレア氏)。ランニングのパートナーがいる場合、”会話チェック”が有効な確認方法です。会話するのが難しくない程度のスピードでを走ってみて、もし呼吸が苦しいようなら、スピードを落とす必要があります。もしアップテンポの歌を元気よく歌えるくらい余裕なら、スピードを上げたほうがよいです。しかしどちらかと言えば、へとへとになって動けなくなるよりは、ゆっくり走るほうがよいです。「走り終わったあとに、もうちょっと走りたいなぁ、あるいは、もうちょっと早く走ればよかったなぁ、と思うくらいがちょうどよいです。そうすることで、達成目標があるために、次回もっと頑張ろうという気にさせてくれます」(ヴァレア氏)
また、必要があれば途中で歩いても構いません。初心者はまず、週に3回、20~30分間のランニング&ウォーキングから始めるとよいでしょう。20~30分間、立ち止まらず、なるべく歩かず、なるべく長い時間を走ることを目標にしてください。そして数週間か1ヶ月に1回程度、前述の”会話チェック”を行って、スピード調整をしてください。そうすれば自然に、より健康に、またより速く走れるようになっているでしょう。
あるいは、そのうち一定のスピードで走ることが退屈に感じるようになるかもしれません。その場合はトレーニングの強度を上げると、カロリー消費や体力増進の成果はより大きいものになります。ただし、体にはその分負担がかかりますので、怪我をしないように十分気をつけてください。週に3回20~30分のランニングを最低4週間(3ヶ月が望ましい)終えて余裕があったら、週に1度、以下のいずれか1つをメニューに追加してみてください(1つだけで十分です)。(1)20秒間のオールアウト(限界まで追い込むスピードで走る)を4本 (2)30秒間の坂道ダッシュを3本 (3)近所の角から角まで(数10メートル)のダッシュを6本。1本走ったら、インターバルは最低2分間、スローなジョギングで息を整えてください。
毎日走らない
成果を上げるためには、実践と継続が大事です。ランニングは筋肉、骨、関節、靭帯に負担がかかりますが、数をこなすごとに、これらはより強くより効率的に成長します。しかしものには限度があります。ランニングとは、言い換えると舗装された道を強い衝撃で何度も繰り返し踏み鳴らすことです。あまりに高頻度で、あるいは高負荷で走りすぎると、怪我のリスクが高くなります。体に十分に負荷を与えつつ、十分回復できる、ちょうどよい頃合いを見つけるのがポイントです。「このバランスは非常に微妙です。自分自身なりのバランスをしっかり探してください」(ランニングコーチ, パーソナルトレーナー・ジェニファー・ジル氏)
ランニング初心者にとっては、週に3回のランニングが理想的です。「それよりも少ないと進歩を感じるのが難しいと思います。あたかも毎回一からやり直しているかのように感じるかもしれません」(ジェニファー・ジル氏)。逆にそれよりも多いと、体が回復するのが難しくなります。例外として、もし運動らしい運動を何年もしていないなら、ランニングは週に2回でも構いません。ただしその場合は、週にもう1日か2日、ウォーキングか自転車の日を追加しましょう。
もし週に3日のランニングを少なくとも6週間続けているなら、もう1日追加してもよいでしょう。マラソンレースの準備などをしているのでなければ、週に4日が多くの人にとって理想的です。余力があれば週5日でもよいですが、疲れを感じながら体に鞭打って5日目を走るくらいなら、週4日を思い切り走ったほうがよいです。「長期的に成長していくために重要なことは、継続することと怪我をしないことです。また、ランニングの強度を上げるときには、日数、時間、距離を全体的に考えて、週単位でそれまでの10~15%程度の強度を上げる程度にとどめるよう注意してください。」(カール・リーバース氏)
長い距離を走る必要はない
ランニングを時間で測るか、距離で測るかについては個人の好みがあるかと思います。マラソンランナーは一般的に長距離のランニングを”何時間何分”と考えるより”18マイル(約29km)”などと距離で考えるのを好む傾向がありますが、初心者の方の中には、”1マイル(約1.6km)”のほうが”15分”よりもしんどく感じる人もいるかもしれません。どちらにしても、オーバーワークに陥ることなく最大限の成果をあげるには、適切な時間と距離の設定が重要になります。
初心者にとっては、トータル時間で測ったほうがプレッシャーが軽くなるのでよいかもしれません。もし体調があまりよくない日は、ペースを落として走れば時間を稼ぐことができます。満足のいくトレーニングではないかもしれませんが、とりあえずその日のトレーニングは完遂することができます。ゆっくり走っているのだからもうちょっと長い距離を走らなくては、と思うよりは、その方がやる気になるのではないでしょうか。もし決まった距離を走ると決めていた場合、下手をするとトレーニングメニューをこなせない可能性があります。付け加えていうなら、決まった距離を設定するのは、オンライン地図やカーナビを使って事前にコースを考える必要があるのでなかなか面倒です。
距離と時間についてはもう一つ考え方があります。決めた距離や時間は、必ずしも伸ばしていかなくてもよいということです。週に3~4日、3~4マイル(4~6km)の距離を走るのに快適なコースを見つけたら、体力維持には十分です。もしさらなる体力向上を望むのなら、距離・時間はそのままに、例えば、1分間キツいペースで走ったら会話ができる程度のスピードで2分間走る、などのインターバルトレーニングを盛り込んで、トータルの負荷(消費カロリー)を上げていけばよいのです。
もしハーフマラソンやフルマラソンに参加することを視野に入れているなら、もちろん距離は伸ばしていく必要があります。ただしゆっくり走ることを心がけてください。最初は、長距離トレーニングは週に1日だけとし、1~2キロずつ距離を徐々に伸ばしていく、週の残りの日は一定の距離を走るというのがよいでしょう。次の段階では、週の残りの日も距離を少しずつ伸ばしていってください。リーバース氏は、2週間に1回、週に走っている日数×1マイルを伸ばしていくことを推奨しています。例えば、週に3日走っているのなら、3マイル(約4.8km)ずつ伸ばしていくということです。また、長距離トレーニングは、1週間に走るトータル距離の半分程度に抑えるようにしてください。