糖質制限ダイエットの落とし穴~その危険性と成功する方法とは
2016年7月6日(木)放送のNHK「ガッテン!」で、「追跡!糖質制限の落とし穴」という特集がありました。大変興味深い内容だったので、ここではその内容をご紹介したいと思います。
一般的な「糖質制限ダイエット」の認識
▲そもそも「糖質制限」なんぞや?という話ですが、一般的には「糖質を減らす」+「タンパク質・脂質は減らさない」ダイエットと認識されているのではないかと思います(実はこの認識に誤りがあることが番組後半で明かされます)。
▲尚、番組調べの全国10代~90代の2210人を対象にしたアンケートによれば、糖質制限ダイエットを経験したことのある人は全体の53%(1179人)にも及び、経験した人の中では65%(764人)が成功しています。絶大な効果があるともてはやされている半面、最近ではその危険性を指摘する声も挙がっています。
糖質制限の危険性を示す例1~アメリカ兵を対象にした実験
▲番組では、その危険性を示す例として、1944年にアメリカ軍の兵士たちを対象にして行われた実験を紹介しています。この実験は、兵士たちがどのくらいの栄養状態で戦えるのかを検証することを目的としており、対象者の食事を1食減らして、1日2回の食事を6ヶ月間続け体調の変化を見たものです。実験の期間中、対象者は筋力トレーニングや有酸素運動など、しっかりと運動をしています。
▲すると、結果は驚くべきものでした。肋骨の間に見える白い部分は心臓ですが、6ヶ月後、心臓が小さくなっていたのです。心臓が小さくなるものなんですね~
▲それだけではありません。上の画像のように、兵士たちはガリガリにやせ細ってしまっていました。
ただし、番組では触れられていませんでしたが、この実験では、糖質だけでなく食事全体を減らしているので、「糖質制限ダイエット」の危険性を示す根拠としては薄いと言わざるをえません。むしろ「ダイエット」自体の危険性と言えそうです。
糖質制限の危険性を示す例2~アメリカ兵を対象にした実験
▲もう一つの例として、神奈川県在住の男性(小板橋さん)の体験が紹介されています。この方は、2年前に体重と血糖値が気になり糖質制限ダイエットを始めたとのこと。
▲小板橋さんが実践したのは上の画像のような食事。肉や野菜は普通に食べますが、糖質(炭水化物)は極力摂らないようにしたとのことです。
▲すると、糖質制限ダイエットを初めて1ヶ月もしないうちに体重は3キロ減少し、血糖値を示すHbA1cの値も6.7から6.1に下降したというのです。今までどうしても下がらなかった体重と血糖値が下がったことで、小板橋は糖質制限ダイエットにハマり、糖質を一切摂らない生活をするようになりました。
▲すると、次第に体にさまざまな異変を感じ始めました。まずは「脳細胞が機能していないような」頭がボーッとした感覚。次に脚力など筋力の衰え。実際に血液検査で、筋肉量を示す値(CK)が78から64に2割近くも減少していたのです。本人曰く「身の危険を感じた」とのことでした。
安全な糖質制限ダイエットの方法とは
では、どうしたら安全な糖質制限ダイエットができるのでしょうか。
▲そもそも日本人の平均摂取カロリーは1日約2000kcalと言われています。そして、その中で糖質(炭水化物)が占める割合はなんと60%にも及ぶのです。この糖質を一切カットしたらいったいどうなるでしょうか?もちろんこれはカロリー不足に陥りますよね。
ちなみに、アメリカの兵士たちの実験では、被験者たちは摂取カロリーを45%減らしたそうなのですが、小板橋さんは糖質を完全オフにしましたので、摂取カロリーは60%減ということになります。つまりアメリカの実験よりもさらにハードなことをしてしまったことになります。
▲ここで専門家の登場です。語るのは北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟氏氏。ちなみに山田氏は「緩やかな糖質制限」を提唱している、日本における糖質制限のトップドクターです。
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▲冒頭で、一般的には「糖質を減らす」+「タンパク質・脂質は減らさない」と認識されている、と述べましたが、山田氏は「タンパク質・脂質は減らさない」というのが間違っていると語ります。正しくは「タンパク質・脂質は増やさなくてはならない」ということなのです。
摂取エネルギーが足りない場合、人間は自分の筋肉を削ってエネルギーに換えようとします。その結果、ガリガリに痩せてしまうのです。
▲結論として、山田氏は、糖質の量はゼロにする必要はなく、普段の3分の1~半分程度すれば十分ということ。そして、タンパク質・脂質の摂取は増やし、肉・魚・大豆などからバランスよく摂るようにする、ということを提唱しています。
また、満腹感を得ることが大切ということも述べています。どうしてもダイエットというと「空腹感を我慢するもの」という先入観がありますが、実は、タンパク質や脂質をしっかり食べると満腹中枢を刺激する物質が分泌され、自然に食べ過ぎないようになるとのことです。一方、糖質は、食後に空腹感を刺激する物質が分泌されやすいので、おなかが空きやすいのです。
▲また、最後にもう一点興味深い指摘をしています。人間の体は、エネルギーや糖質が不足してくると、第3のエネルギーとしてケトン体という物質を使うようになることが知られています。このケトン体は、脳のエネルギーになってくれるというありがたい側面がある一方で、血管に対して傷害を与えるという論文がいくつか出ているそうです。その意味でも、行き過ぎた糖質制限ダイエットは危険ということが言えそうですね。
いかがでしたでしょうか。安全に糖質制限ダイエットを実践するヒントがいくつも隠れていたと思います。ただし、糖尿病・腎臓病・脂質異常症などの方は、自分で判断せず、かかりつけの医師と相談することをおすすめします。