アレルギー性鼻炎を根本的に治したい方へ〜免疫療法とは?
花粉症などのアレルギー性鼻炎で期待されている治療法に免疫療法があります。特に「舌下免疫療法」は、続けやすく、効果も高いと評判です。ここでは、免疫療法について詳しくご説明します。
目次
免疫の性質とは?
免疫は、アレルゲンを敵として攻撃し、排除しようとする性質があります。これは、人間の体を守るための正常な防御反応です。しかし、敏感な人の免疫システムは、多くの人にとって無害なアレルゲン対して、過剰に反応することがあります。これが、いわゆるアレルギー反応です。
一方で、免疫システムは、大量のアレルゲンが体内に入り込むと、そのアレルゲンを「自分自身=無害なもの」と判断し、攻撃するのを止める性質があります。これは「免疫寛容」と呼ばれ、アレルギーの免疫療法ではこの性質を利用します。
免疫療法の仕組みとは?
アレルゲンが体内に入ったとき、いろいろな免疫細胞が出動してアレルゲンと戦ってくれます。その免疫反応の司令塔の役割をしているのが「T細胞」です。T細胞は、治療薬によって大量のアレルゲンが体内に取り込まれると、そのアレルゲンの情報をキャッチします。T細胞にもいくつかの種類があり、大量のアレルゲンがそれぞれのT細胞に対して異なる影響を与えるため、免疫の働き方が過剰にならず、バランスが整います。その結果免疫システムが正常な状態へ回復し、アレルギー反応が起こりにくくなるのです。
免疫療法の効果とは?
体質を改善する
免疫療法は、アレルギーの原因物質に対する免疫反応そのものを改善します。よって、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎の症状だけではなく、眼の症状や皮膚のかゆみなどアレルギー反応全般に効果があります。また、特定のアレルゲンのみならず、他のアレルゲンに対するアレルギー反応も起こりにくくなり、アレルギー体質そのものの改善が期待できます。
喘息も発症しにくくなる
アレルギー性鼻炎と合併しやすい症状に喘息があります。しかし、免疫療法によるアレルギー性鼻炎を治療すると、徐々に喘息も発症しにくくなることが明らかになっています。ある報告によれば、花粉症を持つ子どもが喘息を発症する割合は、免疫療法を受けなかった子どもの場合は40.9%つまり44人中18人でしたが、免疫療法を3年間受けた子どもでは17.8%つまり45人中8人のみでした。
新たなアレルギー疾患の発症を予防する
一般に、例えばダニアレルギーによって何らかの症状をを発症すると、ダニ以外のスギ花粉やイネ科の花粉、食物アレルギー、動物、真菌類などにも抗体ができて、やがて複数のアレルギー疾患を併発する傾向があります。それを食い止めることができるのが免疫治療です。ある研究では、ダニによるアレルギー性鼻炎に対して、免疫治療をまったく行わなかった人は、15年後すべての人に新たなアレルギーが起こりましたが、免疫療法を3年行った人は21%、5年行った人は11%のみにとどまりました。
免疫療法の2つの方法とは?
皮下免疫療法
皮下免疫療法は、皮下組織に注射で薬剤を投入するというものです。注射は週に1~2回、徐々に増やし、一定量まできたら月1回になります。アレルゲンの種類は、スギ花粉やハウスダスト、ブタクサなど数種類に対応します。治療費は診察代や検査代などを別にすると、1回の薬代は数百円です。副作用は稀ですが、重いショック症状のアナフィラキシーを起こす可能性があります。メリットは、治療薬の種類が比較的多いことや複数のアレルゲンに対応できること。デメリットは、注射のたびに通院しなければならないことと、痛みや腫れが起こりやすいことです。
舌下免疫療法
近年多く実施されている舌下免疫療法です。どちらも効果は変わりませんが、続けやすさに違いがあります。舌下免疫療法はアレルゲンの成分を含んだ薬剤を口に含んで、数分間そのままにして飲み込みます。注射に比べて痛みはありませんし、病院へ行くのも初日のみ、あとは毎日家で行うことが可能です。治療費は、診察代や検査代などを別にすると、薬代として月に1,000~2,000円くらいです。デメリットとしては、対応するアレルゲンの種類はスギ花粉とダニのみであることと、副作用で軽いアレルギー症状が出ることがあるということです。
舌下免疫療法を受けられる人とは?
舌下免疫療法を受けるにはいくつかの条件があり、まずは受けられるかどうかの検査が必要です。以下に当てはまる人は治療を受けられる可能性が高くなります。
- 花粉症またはアレルギー性鼻炎と診断されている
- スギ花粉またはダニに対する特異的IgE抗体のどちらか、あるいは両方を持っている
- 年齢12歳以上
- 1秒率70%以下の重症の喘息がない
- ステロイド薬の内服や点滴などを続けていない
- 小児がんや自己免疫疾患などの病気がない
- 転居する予定がない
これらの条件にはあくまで参考です。条件に当てはまらない人は、他の対策で乗り切ることができますし、また将来的には始めることができる可能性があります。また、条件に当てはまる人でも、アトピー性皮膚炎がある場合は、免疫療法でかゆみが増すことがあるため、症状によっては受けるべきではないこともあります。まずは医師とよく話し合い、的確な診断を受けてください。
まとめ
免疫療法を実施できるのは、耳鼻咽喉科や小児科、アレルギー科などです。また、各学会が主催する講習に参加しているなど、一定の基準を満たしている医師のみが治療できます。実施医療機関は、製薬会社などのWEBサイト(http://www.torii-alg.jp/mapsearch)から調べることができますので、気になる方はチェックしてみてください。