食中毒の原因・症状・対処法~6つの主な病原菌とは
食中毒によって起きる症状は、発熱や腹痛、頭痛や関節痛などです。ひとつの症状だけの時もありますし、複数の症状が現れるときもあるでしょう。症状がひどい場合、胃腸症だけでなく神経症状を引き起こしたり、あるいは命を危険にさらすこともあります。症状の軽重を問わず、食中毒が疑われる時は、早めに病院へ行くことをオススメします。ここでは、病原菌種類別の原因や症状、対処法をご紹介します。
食中毒を起こす主な病原菌〜1. サルモネラ菌
犬や猫、鳥やミドリガメ、牛や豚などに寄生しているサルモネラ菌。何かのきっかけでサルモネラ菌に汚染された鳥や豚や牛の食肉、卵や乳製品などを、十分に加熱せずに食べた場合、食中毒になりやすいでしょう。また、サルモネラ菌は乾燥や寒さに強いため、戸外から侵入するゴキブリやねずみによって菌が持ちこまれることも考えられます。
さらに、輸入されたひよこが日本で産卵した卵の中にサルモネラ菌が含まれることもあります。実際、このケースは日本では1989年から増加傾向にあります。卵はできるだけ8℃以下の低温保存や十分な加熱を心がけましょう。オムレツや卵焼き、マヨネーズやケーキなどを作る時は、特に気を付けましょう。
サルモネラ菌による症状は1日〜4日ほど続きます。食べた後半日から2日後に吐き気やけいれん性の腹痛が起きて、その後、嘔吐や水様便の下痢、38℃前後の発熱が起きます。治療は抗生物質や点滴の投与を行います。
食中毒を起こす主な病原菌〜2. 病原性ブドウ球菌
どこにでも存在し、健康な人の皮膚や鼻腔などからも20〜30%程度検出される病原性ブドウ球菌。実は、病原性ブドウ球菌自体は、食中毒を起こすことはありません。食中毒が起きるのは、病原性ブドウ球菌が作り出すエントロトキシンと呼ばれる毒素が、体の腸管で吸収された時です。
病原性ブドウ球菌が食物に取り込まれる元は、調理する人の手指です。特に怪我をしたり湿疹があったり化膿している手指は汚染確率も高くなります。作って時間が経過したおにぎりやお弁当、ケーキやおはぎなどから検出されることが多いので注意しましょう。
症状は比較的軽く、吐き気や嘔吐、下痢や腹痛などです。発熱もほとんどありませんが、稀に重症化することがあり、過去には死に至ったケースもありましたので、油断は禁物です。
食中毒を起こす主な病原菌〜3. ウェルシュ菌
土の中や水中、糞や便など広い範囲で存在しているウェルシュ菌。ウェルシュ菌が食品に感染した時に作り出す毒素である、エントロテキシンが食中毒を起こします。100℃以上の耐熱性を持っているものもあるため、煮たり沸騰させても予防しにくい原因菌です。学校給食などでしばしば集団発生することがあります。
症状は軽い腹痛やひどい下痢、お腹のつっぱり感などです。治療はペニシリンなどの抗生物質を投与します。
食中毒を起こす主な病原菌〜4. カンピロバクター菌
カンピロバクター菌には、大まかにカンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタスの3種類があります。豚や鶏、汚水中などに多く、ペットから持ち込まれることによっても発生しています。
家庭内では食物にペットを近づけないことや、夏にする機会の多いバーベキューなどで肉料理からの感染に注意しましょう。症状は発熱や下痢、腹痛などで、10~20代を中心に、特にカンピロバクター・ジェジュニは小児に多く見られます。
食中毒を起こす主な病原菌〜5. ボツリヌス菌
強い毒性のあるボツリヌス菌。A型・B型・E型・F型がありますが、日本で多く見られるのは毒性がやや少ないE型です。低温下でも繁殖し、体内に入ると消化酵素では分解されません。但し、熱によって破壊されますので、80℃で30分間煮沸すると予防することができます。手づくりで加工した海産物や、保存状態の悪い瓶詰め類には注意しましょう。
症状は発熱はありませんが、軽い腹痛や嘔吐があります。また、ボツリヌス菌は体内で麻痺などの強い神経症状を起こしますので、言葉が出にくくなったり、飲み下しができなくなったり、物が二重に見えたり、まぶたが重くなって下がってきたりすることがあります。抗毒素を投与する時期を逸すると稀に死に至る場合もありますので気を付けましょう。
食中毒を起こす主な病原菌〜6. 腸炎ビブリオ菌
以前よく起きていた食中毒の細菌である腸炎ビブリオ。塩水中で繁殖するため、夏のお寿司や刺身、生の魚介類を食べて起きることがありました。特に海水温が上昇する6月〜9月の夏に警戒情報が出ていましたが、低温輸送法によって発泡スチロールなどに氷詰するようになりましたので、発生率は減少しています。
但し、腸炎ビブリオの仲間であるナグビブリオ菌が、東南アジアなどの淡水や汽水域に多くいます。海外旅行の際は、生の魚に注意した方が良いでしょう。症状は汚染された食品を食べた後、10〜24時間後に水様便や血便、急激な腹痛が起きます。治療は脱水症状の改善や抗生物質の投与を行います。