自律神経と免疫力の関係とは?~体を温めて免疫力を高めよう
肩こり、不眠、頭痛、めまい、耳鳴り、腰痛、疲労感といった体の不調に悩んでいませんか?これらの不調は、病院に行って診察や検査をしても数値として表れず、対処に困ることが多いものです。実は、体の不調の多くは自律神経が関係しています。自律神経のバランスを整えることによって、免疫力が上がり体調の改善に役立ちます。
そこで、自律神経を整えるために有効なのが体を温めるということ。ここでは、体を温めることによって自律神経を整え、免疫力をアップさせる、そのメカニズムについてご紹介します。
自律神経のバランスとは?
自律神経とは?
体をコントロールしている神経の中には、自分の意思で動かすことができない自律神経があります。この神経は、脳からの指令がなくても状況に応じて体の必要を満たすために自動的に動いており、生命維持のために呼吸や体温、血圧や血流などをコントロールしています。自律神経には、昼間活動する交感神経と夜間活動する副交感神経があり、バランスを保って働いています。
交感神経と副交感神経とは?
交感神経は、活動しているときやピンチの時・極限状態になると優位になります。緊張感アップ、心拍数増加、血管収縮、早い呼吸などをもたらし、いつでも動き出せる準備態勢をとります。仕事やスポーツで集中したり、能率が上がったりしている時を想像すると分かりやすいでしょう。
一方、副交感神経は体を休める時などエネルギーを蓄える状態の時に優位になります。心拍数の低下や血管の拡張、遅い呼吸などをもたらし、体を弛緩させゆったりとした気分になります。就寝前の眠たい時などを想像すると分かりやすいでしょう。
自律神経のバランスが良いときとは?
交感神経が優位に働くのは、基本的に短時間です。つまり、交感神経が優位に働いている時間が長ければ長いほど、緊張して血管が収縮し血流が悪くなった状態がそれだけ長時間続きます。交感神経が過剰に働くと、体調不良や病気を招いてしまうので注意してください。昼間を活動的に過ごしたら、夜間はしっかり休むよう心がけましょう。
自律神経と免疫力の関係とは?
免疫力とは?~白血球の働き
自律神経のバランスは免疫力と密接な関係があります。そもそも免疫力とは、体が病気にならないよう抵抗する力のこと。その免疫力の中核を成すのが血液成分の一つである白血球で、体に侵入しようとする細菌や異物を殺してくれます。
白血球は、大まかには「マクロファージ」「顆粒球」「リンパ球」の3つに分類することができます。マクロファージは細菌や異物の侵入にいち早く駆けつけて分解したり処理するのと同時に、異物が侵入したことを顆粒球やリンパ球にを知らせ、顆粒球が比較的大きな異物を処理し、リンパ球が小さな異物を処理します。
交感神経が優位になると免疫力が下がる理由とは?
交感神経が優位になると、白血球の中の一つ顆粒球が活性化します。顆粒球は、細菌や異物の処理が済むと活性酸素を放出しながら消失します。活性酸素は酸化力が強く正常な細胞を破壊するため、病気の元になるものですが、通常は体に本来備わっている抗酸化力が無毒化してくれるために問題になることはありません。
しかし、交感神経が長時間働くと顆粒球の比率が正常範囲を超えてしまい、活性酸素が大量に発生してしまいます。その結果無毒化が追いつかず、免疫力が低下してしまうのです。
副交感神経が優位になると免疫力が上がる理由とは?
一方、副交感神経が優位になると活性化するのがリンパ球です。リンパ球は、侵入してきたウイルスを記憶して再び侵入してくるのを防ぎ、また癌細胞や老化細胞と闘うなどして、病気にかかりにくくする働きがあります。
そのため、副交感神経が優位になる時間が長いと、リンパ球が増加して活性酸素が減少し免疫力が上がります。風邪をひいた時など、暖かくしてゆっくり休むと良いのはこのメカニズムが働いているからです。
自律神経と体の冷えの関係とは?
体が冷える原因とは?
さらに、自律神経と関係が深いのは体の冷えです。デスクワークが多く車社会の現代人は、筋肉をあまり動かさないため、体内で熱をつくることが少なくなっています。また、一年中冷たい飲み物や食べ物を摂ることができますし、暑い夏でもエアコンの影響で体を冷やしてしまうことが多くなっています。さらに、意外に思うかもしれませんが、体の不調が多い人が服用しがちな解熱剤や頭痛薬などの消炎鎮痛剤なども体を冷やす原因となります。
体が冷えると免疫力が下がる理由とは?
では、自律神経と体の冷えはどのように関係しているのでしょうか?体は冷えると、まず胸や腹など内臓の温度を保とうとして、手足の抹消の動脈を収縮させて熱の放出を防ぐため、全身の血流が悪くなります。こうなると交感神経が優位になります。
そのまま寒い状態が続くと、内臓への血流も悪くなるため、内臓の機能全体が低下して、栄養の吸収や老廃物の排泄がうまくいかなくなります。交感神経が優位になる状態が続くため、自律神経のバランスが崩れて、体温調節が狂ってしまい、さらに体冷えていくことに。この状態では、侵入してくる細菌や異物を殺す白血球が全身に運ばれることも難しくなるため、免疫力も低下してしまいます。
薬を服用すると免疫力が下がる理由とは?
体の冷えはさまざまな体の不調を招くもの。例えば、頭痛や胃痛などを抱える人の中には、痛みを抑えるためにとりあえず消炎鎮痛薬を使うという人も多いのではないでしょうか?
しかし、消炎鎮痛剤やステロイドなどの副腎皮質ホルモンなど薬の多くは、炎症を鎮めたり痛みを緩和させたりするために血流を抑えます。つまり、結果として体を冷やし、交感神経が優位になってしまうのです。
体の不調や病気を訴える人の多くは元々ストレスや体の冷えを感じています。そんな状態でこのような薬を多用してしまうと、さらに体の冷えと痛みの悪循環を起こしてしまうのです。
自律神経と体を温めることの関係とは?
体を温めると免疫力が高くなる理由とは?
「体を温める」このシンプルな行為の健康効果は絶大なものがあります。まず、血管が拡張して血液の循環が良くなるため、全身に白血球が行き渡って免疫力が上がります。
また、副交感神経が優位になって白血球のリンパ球が増加するため、さらに免疫力が上がります。それだけでなく、脳ではリンパ球の増加によって脳内物質であるβ-エンドルフィンが分泌されて、幸せや喜びなどの多幸感や快感が多くなり、緊張感が解消されるという良い循環をもたらします。
体を温め過ぎると免疫力が下がる理由とは?
ただし、体を温めれば温めるほどよいかというとそうでもないので注意してください。実は、副交感神経が過剰に働くと、リンパ球が異常に増加して、むくみやすくなってしまいます。むくみは血流の循環を悪くし、逆に体の冷えを招きます。エアコンの温度は適切な設定にし、着ぶくれするほどの厚着はしないなど、体の温め過ぎには注意しましょう。
体を温めるオススメの方法とは?
体を温めるオススメ方法は、ゆっくり湯船につかることです。入浴剤を使うと、血流が促進され体の保温効果も高まります。また、使い捨てカイロ、お灸などを使うのも良いでしょう。特に、体の中でも大きな筋肉があるお腹や太腿の全面、お尻や二の腕(力こぶの反対側あたり)を温めると効率的です。
また、温かい飲み物を飲むのもオススメです。例えばハーブティーは体を温めてくれる上に、香りが脳をリラックスさせ副交感神経を高めるのに役立ちます。
これらを上手に活用して体を温めれば、免疫力が上がって不調や病気の改善につながるでしょう。実際、不調や病気を抱えている人は白血球(特にリンパ球)が非常に少ないのですが、体を温めるとリンパ球が確実に増えるという研究結果があります。できるだけ体を温めるとともに、体を冷やさないようにに心がけましょう。