「食べないダイエット」に効果がない理由

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世の中にはさまざまなダイエットに関する迷信がはびこっています。例えば、「間食をしたら太る」と思っていませんか?しかし実際は、多くの栄養学の専門家が、適度な間食は代謝をアップさせるのに効果的だと語っています。

ここでは、もう一つ興味深い迷信をご紹介します。「食べないダイエットでは痩せられない」ということです。

「そんなまさか」という声が聞こえてきそうですが、これは、世界的に有名なウェルネス(健康的なライフスタイル)研究の専門家、ジョナサン・ベイラー氏が、大ヒット中の著書『The Calorie Myth: How To Eat More, Exercise Less, Lose Weight and Live Better』の中で語っている説です。

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なぜ脂肪ではなく筋肉が失われるのか?

以下、引用部です。

“The reduction of energy intake continues to be the basis of…weight reduction programs…[The results] are known to be poor and not long-lasting.”
– George Bray, Pennington Biomedical Research Center

訳:
古今東西、ダイエット方法といえば”カロリー摂取を減らす”ことが根底にありますが、実はこの方法は効果が薄く、また長続きもしないことが分かっています。
– ペニントン生体医療研究センター・ジョージ・ブレイ氏

食べる量を減らすと、体は「あまり脂肪を燃やす必要がなくなった」と感じ、代謝を低下させます。そして、体内にある脂肪を大切にしながら省エネで運転するようになるのです。さらには厄介なことに、筋肉を分解してエネルギーに変えていきます。筋肉の減少が体によくないことはお分かりですね。そして、どうにもエネルギーが足りなくなってくると、最後の手段として脂肪をほんの少し追加で燃やしてエネルギーを確保するのです。

なぜ体は、今ある脂肪を大事にして、筋肉を燃やしてしまうのでしょうか?その答えを、ちょっと別の角度から探ってみましょう。

人間の代謝システムは、飢餓状態になったときに何を最も必要とするでしょうか?答えは「体内に蓄えられたエネルギー」です。

では、体内に蓄えられたエネルギーの中で最も有効なエネルギー源は何でしょうか?答えは「脂肪」です。

では、人間の代謝システムは、飢餓状態になったときに、体内の脂肪を燃やそうとするでしょうか、それとも守ろうとするでしょうか?答えは「守ろうとする」です。

では、人間の代謝システムにとって、飢餓状態になったときに、必要性の優先順位が低いものは何でしょうか?答えは「筋肉」です。なぜなら、筋肉は多くのカロリー(エネルギー)を消費するからです。よって、人間の代謝システムは、餓えの恐れを察知すると、カロリーを欲しがる筋肉を削ぎ落としてエネルギーに変えてしまいます。ある研究によれば、食べる量を減らすことによって減少する体重の70%は筋肉の減少によるものと言われています。

言い換えると、長い目で見たときに、人間の体は筋肉が減少するにしたがって、脂肪が増えやすくなります。なぜなら、食べる量を以前のように増やし、飢餓状態に終わりが来たときには、既に筋肉も代謝も減少しているので、使われなかったエネルギーが脂肪として体に残ってしまうからです。

食事を摂らないことによる副作用

例えば仮に、ある新しい薬のCMがテレビから流れてくることを想像してみてください。その薬は、「睡眠不足になる代わりに、視力を多少改善する効果がある」と謳っています。そして最後に副作用の説明として、「もし普通通りに睡眠をとろうとすると、視力は前よりも悪くなる」と言っています。

あなたは視力改善のためにこの薬を買おうと思いますか?もちろん買いませんよね。一生睡眠不足でいるなど耐えられるはずがありません。そんな一時的の効能は、副作用を考えると割にあわないことは明らかです。

では今度は別のテレビCMを想像してみてください。

それはダイエット用のドリンクで、「しばらくの間断食に近い生活を送る代わりに、体重が多少減少する」と謳っています。そして最後に副作用の説明として、「元通りの食生活に戻ると、体重は前よりも増える」と言っています。

あなたはダイエットのためにこのドリンクを買おうと思いますか?もちろん買いませんよね。一生断食に近い生活を送ることなどできるはずがありません。しかもひどい副作用がある。それなのにこの手のダイエット商品を買う人がなんと多いことでしょうか!

それではこの副作用についてもう少し詳しく説明していきましょう。

スイスのジュネーヴ大学で「食べる量を減らすことによってどのような副作用があるか」というテーマの実験が行われたことがあります。この実験では、同じ内容のエサを食べるマウスを、以下の3つのグループに分けました。

  • 普通グループ:普通の量を食べる大人のマウス
  • 少食グループ:食べる量を減らして体重が減少する大人のマウス
  • 子供グループ:体重が減り始めた少食グループと元々同じくらいの体重の子供マウス

人間に例えるなら、普通グループは平均的な35歳の女性、少食グループは、高校時代のジーンズを履くためにカロリーオフのダイエットに励んでいる35歳の女性、子供グループは、24インチのジーンズが試着しないでも余裕で入る女子高生といったところでしょうか。

最初の10日間、普通グループは通常通りにエサを食べ、少食グループは通常の半分の量のエサを食べます。そして10日後、

  • 子供グループが参加し、通常通りのエサを食べる
  • 少食グループが少食を止め、通常通りに食べ始める
  • 普通グループは引き続き通常通りにエサを食べる

この状態を25日続け、実験は計35日間で終了となりました。まとめると、普通グループは35日間通常通りにエサを食べた。少食グループは最初の10日はエサが少なく、その後の25日は通常通りに食べた。子供グループは25日間通常通りに食べた、ということになります。

さて、どのグループが最も体重が重く、体脂肪率が高いと思いますか?

消去法で、子供グループは最初に消すことができるでしょう。なぜなら、このグループは歳も若く、他と比べてもともとスリムだからです。次に、一般的なダイエットの考えでは、少食グループが消えることになるでしょう。なぜなら、これらは最初の10日間食べる量が少なかったからです。つまり、残るのは普通グループ。最も体重が重く、体脂肪率が高いのは普通グループである。さて、この答えは正しいでしょうか?

不正解!

最も体重が重く、体脂肪率が高いのは少食グループなのです。このグループは他と比べ断トツに体重が増加していました。食べる量を減らすと、痩せるどころか、かえって太るのです。

脂肪の”超蓄積”

副作用の話に戻ります。食べる量を減らすことは、何もしないより悪いということが分かりました。

これはなぜでしょうか?

ひとたび飢餓を感じると、代謝システムにとって、「失われた脂肪を取り戻すこと」が最優先事項になります。これは、将来また同じようなことが起こっても、飢え死にしないようにするための人間の防衛本能です。研究者は、これを「脂肪の超蓄積(fat super accumulation)」と呼んでいます。「栄養供給を抑制した後で起こる”脂肪の超蓄積”は、リバウンド肥満の大きな原因であることがさまざまな研究で明らかになっています。これは動物・人間を問いません」(テキサス大学教授・E.A.ヤング氏)。

厄介なのは、食べる量をただ今まで通りに戻しただけなのに、この「脂肪の超蓄積」現象は起きるということです。つまり、特にたくさんの量を食べているわけではないのにもかかわらず、です。ジュネーブ大学の研究における少食グループは、普通グループと子供グループと同じ量のエサを通常通りに食べ始めるとすぐに、体脂肪が急激に増加しました。代謝システムが失われた脂肪を埋め合わせようとしていたのです。

この現象はもう一つの角度から説明することができます。「食べる量が減ったことで代謝が低下した」ということです。つまり、同じ量・同じ質のエサを、代謝の低い体に入れると、脂肪になりやすいのです。

ジュネーヴ大学の研究では、少食グループは、体脂肪の燃焼効率が通常より500%も悪かったことが分かっています。一方で、食べる量を元に戻すと、代謝システムの中に体脂肪の燃焼効率を向上させようとする要素があることも分かっています。

結論としては、食べないダイエットでは痩せることはできないということです。ダイエット効果がないばかりか、健康にもよくありません。こんな虚しいことがあるでしょうか!?

しっかり食べて痩せる

ではどうしたらリバウンドせずに健康的に痩せられるでしょうか。その答えとなるダイエット方法は一つではありませんが、少なくともしっかり食べないといけないということは言えます。しかし、ダイエットしたいと思う人は、それまでも十分すぎるほどしっかり食べていたのでしょうから、同じ食生活を続けていては痩せられません。そこで、具体的には以下の方法を提案します。

糖質を減らす

繰り返しますが、食事自体はしっかり摂らないといけません。ひとまず「カロリー摂取」はそれまでと同程度でも構いません。そこで、その中身を変えていきましょう。紹介した実験結果からも、「たんぱく質」だけは絶対に減らしてはいけないことはお分かりと思います。では何を減らすか?「脂質」と考えがちですが、実は適度な脂質は腹もちをよくしてくれる、ダイエットの味方なのです。もちろん、それまで摂り過ぎていた自覚がある方は多少減らすべきですが、減らすべき一番手ではありません。

最も減らすべきは「糖質」です。糖質の摂り過ぎは、血糖値を管理するホルモン「インシュリン」の関係で、脂肪を溜め込みやすくします。糖質を摂らなすぎるのもいけませんが、多少減らしても、体内で脂質が分解されて糖質になってくれますので問題ありません。

気を付けないといけないのは、減らしたものがあっても、カロリー摂取はそれまでと同程度にしないといけないということです。減らしたカロリーの埋め合わせには、「たんぱく質」を今までより多く摂ってください。例えば、「糖質-2」「脂質-1」と減らしたら、「たんぱく質+3」という具合に増やし、全体の摂取カロリーがマイナスにならないようバランスを取りましょう。

徐々に減らす

とは言え、それまで食べ過ぎていた人は、やはり食べる量は減らすべきです。しかし、実験の結果からも、いったん食べる量をガクッと減らしてから戻すと逆効果であることが明らかになりました。そこで、食べる量はほんの少しずつ減らし続けていき、二度と戻さないのが正しい方法です。

例えば、糖質を減らす観点からも、ご飯(米)の量を徐々に減らしていきましょう。まずは日頃自分がどのくらいご飯を食べているか計ってみてください。おそらく大食いの方は一回で一合(約340g)くらいは軽く食べていることでしょう。これを、毎月10gずつ減らしてみてはいかがでしょうか?急に減らしすぎると、反動で空腹に襲われて食べる量が戻りやすいですが、毎月10gなら無理なく減らせると思います。これで、一年で120g、二年で240g減らすことができます。100gに到達したらストップして構いませんが、食べる量は二度と増やしてはいけません。もし減らすペースに余裕があると感じたら、毎月20g、あるいは10%ずつ減らしていくのもよいでしょう。

チーティングを活用する

食べる量を減らしていくことによって体は省エネ体質になり、あまり脂肪を燃やさなくなっていきます。即ち「代謝の低下」という問題に直面します。これは実験の結果で述べた通りです。これがいわゆる「停滞期」です。しかし、一方で食べる量を増やすと代謝が復活することも明らかになりました。とは言え、食べる量は二度と増やしてはいけません。ここに矛盾が生じます。

この矛盾を解決するのが「チーティング(cheating=騙す)」という手法です。食べる量自体は長期的には右肩下がりにしつつ、たまに好きなものを好きなだけ食べるのです。こうすることによって、体の代謝システムは騙されて、「もっと脂肪を燃やさなくては!」と思い、減った代謝を復活させてくれるのです。このチーティングを定期的に取り入れることによって、長期間ダイエットを継続していくことが可能になります。チーティングの頻度は、週に一度程度くらいがおすすめです。

この記事はアメリカのサイトhttp://www.bengreenfieldfitness.comの記事を「健康&ダイエットNAVI」が日本向けに編集したものです。
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運営者情報

健康&ダイエットNAVI 管理人

健康診断で脂肪肝を指摘されたことを機にダイエットを決意。さまざまな文献を読み健康的なダイエットを研究。糖質制限、有酸素運動(ボクシング)、筋トレ等の実践により、1年間で約17kg減、体脂肪11%減のダイエットに成功しました(管理人のダイエット体験談はこちら)。このサイトでは、ダイエットや健康に関するさまざまな有益な情報をご紹介しています。

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