不安障害につながる9つの症状とは?
「不安」は自然な感情で、人間が誰でも抱くものです。しかし、不安によってさまざまな症状があらわれることもあり、これらを主症状とした病気のグループを「不安障害」と呼びます。具体的な疾患には、パニック障害、強迫性障害社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害などがあります。ここでは、不安障害につながる可能性がある症状をご紹介します。自分や周りの人にこのような症状があるかどうか確認してみてください。
1. 過干渉になる
「うまくいかなかったらどうしよう」「きっとうまくいかない」などと不安に思うために、ついつい自分のやり方を他の人に指図したり、人のやり方を否定したりしてしまいます。言われた方は不愉快ですし、場合によっては「この人は悪意があるのでは?」と感じることもあるでしょう。
このように自分のやり方を人に押しつけてしまうのは、自分のやり方以外が「未知」だからです。人は未知のことに対して不安を感じやすいものですが、その結果をどうすることもできません。結果がどうなっても仕方ないと受け入れることも大切です。また、周りの人は、「この人がこういう言い方をするのは、他のやり方への不安があるからであって、上から目線ではないのだ」ということを知っておくと、人間関係もスムーズになるでしょう。
2. イライラする
不安が原因でイライラすることが多くなる人もいます。不安を感じること自体が大きなストレスになり、心身に負担がかかっているといいう状態です。意外と自分自身が不安でいることに気づいていないことが多く、「自分をイライラさせる相手が悪い」と思ってしまうこともあります。
そのような不安を感じている人の場合、「気にしないようにする」という対処法があります。ただし、不安がある程度以上強いときは逆効果になります。「気にしないようにしよう」と思っても結局不安が出てきて、状況をコントロールできない自分にますます不安になるからです。軽い不安には有効ですので、その見極めが重要になります。
3. 攻撃的・暴力的になる
好戦的で「ああ言えばこう言う」というタイプの人も、何らかの不安を抱えていることが多いものです。常に相手よりも勝っていないと不安に耐えられず、理不尽なことを言ってでも負けたくないという感情があるからです。ドメスティック・バイオレンス(DV)と呼ばれる家庭内暴力の加害者に多いのもこのタイプで、自分の不安に向き合うことができないために、目の前にいる人を制圧することで安心を得ようとします。
このようにして得た安心は束の間のものなので、事態はさらに悪化していきます。そのような人はたいてい「自分の不安」について考えたことがなく、「本当は不安なのでは…」と指摘されるとかえって怒り出してしまうことが多いでしょう。
4. 確認行為が多くなる
「確認行為」とは「もし~だったらどうしよう」と不安を感じて、何度も再確認してしまう行為のことです。確認すると安心して気持ちが落ち着きます。典型的なのは、何度も手を洗うことや、何度も鍵を掛け直すことです。他にも、他の人に何度も確認したり、逆に他の人も自分に何度も確認するように求めることもあります。
確認行為と同質の行為に「儀式的な行動」があります。例えば、「インフルエンザウイルスが付いていたらどうしよう」と不安を感じると、コートをベランダへ運んで消毒するという行為を、衝動を感じるたびに繰り返すことで安心するというものです。あるいは「頭の中で大丈夫と10回言う」といった精神的な儀式を行う人もいます。儀式をやめさせようとすると、余計に不安が燃えあがってしまい、また、こういった行為が敵意や攻撃へとつながることもあります。
5. 仕事や決断が遅くなる
仕事など締め切りが守れない人をルーズといいますが、不安が強い人は「もっとよくできるのではないか」と考えてしまうために、仕事や決断が遅くなります。やればすぐできそうなことをやらなかったり、「すぐやります」と言いながらいっこうに手をつけないのはこのタイプです。
このような場合は、目標を小さくして、不安を少なくするのがよいでしょう。決断が遅い場合は「とりあえずの決断」をしてもらいます。「本当の決断」は後で良いので、とりあえず仮の方向を決めて、後で軌道修正を加えていくという方法です。どちらにしても、不安で立ち止まっている人のハードルを下げてあげることが大切です。
6. 原因がわからない身体症状が出る
不安が身体に現れやすい人の場合、めまいや頭痛、胸の苦しさやしびれなど、検査しても異常がみつからない身体症状が出てくることがあります。これは不安を不安と感じたり表現したりできない、あるいは、日頃から自分の気持ちを見つめたり、自分に向き合うのが怖いと感じている人に多い症状です。また、中には不安を自覚していても、同時に身体症状が出る人もいます。
7. 体の調子を過剰に気にする
体の変調が過剰に気になるために、不安になる人もいます。ちょっとした体調不良で「重病にかかっているのではないか」とか「このままひどくなって死んでしまうのではないか」などといった心配でいっぱいになり、繰り返し医療行為を求めることもあるでしょう。これは、前述の「原因がわからない身体症状」と相まって現れることもあります。このような人は健康に不安があることは自覚しており、「身体が良くなれば不安はなくなる」と考えていますが、そもそも不安によって身体症状が現れているという視点は持っていません。
抱える不安から逃れたくて、物質や行為に依存してしまう人もいます。具体的には、薬物やアルコール、過食や買い物への依存、またはリストカットなどの行為です。心を麻痺させる効果を求めて、これらのことを不安に対処する方法として用いてしまいます。このような依存行為は、不安を和らげるどころか逆効果です。身体も心もますます不安に敏感になりますし、人には言いにくい症状を抱えていることで、不安がさらに大きくなってしまうでしょう。
9. ひきこもりになる
さまざまな原因がありますが、不安のためにひきこもりになる人も多くいます。社会に出て人と接することや、仕事に就いてやっていくことへの不安を表現できない人に多いでしょう。一方、「自分に合う仕事がない」「別に不安はない」という人や、そもそも「人に関心はない」という人でも、実際は不安に向き合うことへの恐怖を感じていることがあります。
このような人に「そんなにひきこもっていたら人生取り返しがつかなくなる」といった言葉をかけてしまうと、恐れをあおってしまうため逆効果になります。ますます不安を燃え上がらせて、ひきこもりを激しくしてしまうため注意しましょう。
まとめ
いろいろな表現であらわれる不安の原因はさまざまです。不安を抱える人にとって、「不安があることを認めることでさえ不安である」という構造を理解してあげることは重要です。不安障害は「気づいたらなっていた」という人も少なくありません。健康な人から見てというだけでなく、不安を抱える本人から見ても、「不安が強すぎる」と感じる場合は、早めに専門医に相談しましょう。