「活性酸素」…最近何かと耳にすることが多いキーワードです。なんとなく「体に悪いものなのだろう」という気はしますが、どう悪いのか?なぜ悪いのか?等々、詳しいことは分からない方が多いのではないでしょうか。そこで、自分の備忘録を兼ね、「活性酸素とは何か?」ということを、信頼できる出典を参照しつつ正確に、それでいてできるだけわかりやすく説明してみました。
「活性酸素」の「活性」とは?
まず「活性酸素」の「活性」という言葉が分かりにくいですよね。私たちがよく知っている「活性化」という言葉からは「活性」はよい意味のようにも聞こえます。しかし、ここで言う「活性」は化学の世界の言葉で、以下のような意味です。
物質の原子・分子が高エネルギー状態で、化学反応などが起こりやすいこと。
(出典:コトバンク)
「活性」とはただ「化学変化が起こりやすい」ということなんですね。「活性酸素は悪いもの」というイメージが独り歩きしていますが、「活性酸素」いうもの自体は、悪いものでもなければよいものでないわけです。例えるなら「何をしでかすかわからない」というだけ(笑)。何をしでかすか分からない危ない人も、何もせずにじっとしていれば無害です。あまり偏見の目で見てはいけませんね。
「活性酸素」とは?
そのことを踏まえておくと、以下の説明も理解しやすいと思います。
活性酸素は、大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称である。
(出典:Wikipedia)
「活性酸素」というくらいですから、「酸素」が変化したものだということは想像通りだと思います。「反応性の高い」という表現が分かりにくいですが、これがまさに、最初に説明した「活性(=化学変化が起こりやすい=何をしでかすか分からない)」という意味です。つまり、「活性酸素」とは
- 「酸素が変化したもの」且つ
- 「何をしでかすか分からない状態のもの」
と言えそうです。
活性酸素の性質とは?
活性酸素は「何をしでかすか分からない」と説明しましたが、では、何かをするとしたら具体的に何をするのでしょうか?
活性酸素は、普通の酸素に比べて、 細胞を酸化させてしまう力が強いのが特徴です。
(出典:日本クリニック株式会社)
つまり活性酸素は、ものを強い力で酸化させるのです。酸化と言うと分かりにくいかもしれませんが、鉄が「錆びる」ことを考えてみてください。これも一種の酸化ですね。
つまり活性酸素とは、良くも悪くも「ものを酸化させる力が強すぎるもの」と考えることができます。
活性酸素とは具体的にどんな物質?
活性酸素は「酸素が変化したもの」だとご紹介しました。ではここで、具体的に酸素が何に変化したものなのかについて触れておきましょう。
一般的に
- スーパーオキシドアニオンラジカル(通称スーパーオキシド)
- ヒドロキシルラジカル
- 過酸化水素
- 一重項酸素
の4種類とされる。(出典:Wikipedia)
耳慣れないものばかりですね。ここでは「4種類あるんだ」くらいに覚えておけばいいでしょう。この4種類についてはまた後のほうでちょっと触れます。
活性酸素の役割とは?
すでに述べたように「酸化」自体は悪いことでもよいことでもありません。例えばこんな話があります。
白血球はわざわざ活性酸素を作って利用しています。白血球は体内に細菌が侵入してくると捕獲して感染から守ります。しかし、捕獲された細菌はまだ増殖しようとするため殺菌する必要があります。そこで、白血球は(中略)ス-パーオキシドを作ります。このスーパーオキシドはそのままで、さらに反応して生じる次亜塩素酸となり、細菌を殺します。
(出典:理大の栞)
つまり、「酸化作用」には「殺菌」という、人間にとってメリットになる役割があるのです。上の例は、活性酸素の4種類のうちの一つ「スーパーオキシド」の話ですが、その他の3つにも殺菌作用があり、例えば以下のような分野で活用されています。
活性酸素の問題点とは?
さて、このように「酸化作用」によってメリットもある活性酸素ですが、一方でいろいろと問題点もあります。
活性酸素には、その強い攻撃力で体内に侵入したウイルスや細菌を退治するという大切な役割があります。ところが必要以上に増えてしまうと、健康な細胞まで酸化してしまうため、老化の引き金になります。
(出典:サントリー健康情報レポート)
つまり、活性酸素は増えすぎてしまうと、闘う相手となる雑菌がいなくなるので、今度は人間の細胞を攻撃対象にしてしまう(=酸化させる)のですね(しかもその攻撃力が強いというのがまた厄介です)。「酸化」とは「錆びる」ようなものだと説明しましたが、「人間の細胞が錆びる」ことの一つの表れが「老化」なのです。
活性酸素が人間の体に与える悪影響とは?
一言で「老化」と言っても、具体的にはさまざまな現象があります。
年々、こんな変化を感じていませんか?
- 白髪が増える、髪が抜ける
- 物忘れが多くなった
- 肌のシミ・シワが増えた
- 視力が弱くなった、目がかすんでくる
- 歯や骨が弱くなった
- 筋力が落ちてきた
- 胃がもたれるようになった
- 疲れやすくなった
- 風邪をひきやすくなった
(出典:サントリー健康情報レポート)
きっと誰しもいくつかは心当たりがあるのではないでしょうか。もちろんこれらの全部が全部、活性酸素だけの仕業というわけではないでしょうが、こちらの出典のサイトでは、これらは体の錆びつきを表すサインの例として挙げています。
とは言え、これらだけだったら、「歳をとったら当たり前のこと」と諦めもつくかもしれません。しかし、実はそれだけではないのです。
活性酸素が関わる疾患
- 血管系疾患:血液の老化・動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中・脳梗塞
- 内科系疾患:癌・糖尿病(白内障)・肝炎・腎炎・胃潰瘍・腸管潰瘍・性欲減退
- 皮膚科系疾患:アトピー性皮膚炎・シミ・ソバカス・シワ・肌荒れ・火傷
- その他:一般の炎症(花粉症、鼻炎)・冷え性・肩こり・便秘・疲労・二日酔い
(出典:SOD-JPドットコム)
現代人を悩ませる病気や症状のなんと九割に活性酸素はかかわっているのです。
(出典:SOD-JPドットコム)
なんとこんなにもさまざまな病気や症状が、活性酸素によって引き起こされているのです!しかも病気や症状の90%とは!これには驚いた方もいるのではないでしょうか?しかも、ここに挙げた疾患は京大の丹羽博士が挙げたものだけで、他の方が挙げたものを含めれば、さらに多くの病気があります。
まとめると、たしかに活性酸素は体の役に立つ面はありますが、同時に老化やさまざまな病気を引き起こします。最初に「活性酸素自体は悪いものでもなければよいものでない」と述べましたが、結論としては悪影響のほうがはるかに大きいと言えそうです。
活性酸素の中で一番の悪玉とは?
ちょっと話は戻りますが、活性酸素には「スーパーオキシド」「ヒドロキシルラジカル」「過酸化水素」「一重項酸素」の4種類があると前に述べました。これらはそれぞれに特徴があり、それはそれで興味深いのですが、細かい話が多いので詳しくはご紹介しません。ただ、一つ大事なことがあるので、ご紹介しておきます。
活性酸素の中でもヒドロキシルラジカルはきわめて反応性が高いラジカルであり、活性酸素による多くの生体損傷はヒドロキシルラジカルによるものとされている
(出典:Wikipedia)
ヒドロキシルラジカル(·OH)はスーパーオキシド(·O2-)に比べて100倍の酸化力があり、核酸、脂質、タンパク質と反応し、これらを酸化させます。
(出典:MizMiz株式会社)
「生体損傷」というのは、前項で述べた老化やさまざまな病気のことですね。つまり、4つの活性酸素の中で、断然悪玉なのがヒドロキシルラジカルということです。長い名前なので名前は忘れてもよいですが、一つだけひどい悪玉があるということは是非覚えておいてください。
活性酸素が発生する原因とは?
となると、活性酸素はなるべく増やしたくありません。では、そんな活性酸素は、いったいどうして発生してしまうのでしょうか?活性酸素の発生原因としては以下のようなものが挙げられます。
活性酸素が発生する原因
- 普通に生活しているだけでも作られる
- ストレス
- 紫外線
- 喫煙
- 過度な飲酒
- 食品添加物
- 大気汚染
- 激しい運動
(出典:スキンケア大学)
いかにも体に悪そうなものがあります。例えば「喫煙」「過度な飲酒」などは避けようと思えば避けられますが、「普通に生活しているだけでも作られる」はどうにもなりませんね!ちなみにこれについては「呼吸によって取り入れた酸素のうち、約2%が活性酸素になる」そうです。また、「激しい運動」は意外です。もちろん運動自体は体によいものですが、その一方で、体を酸化させる原因も作ってしまっているのです。これも困ったものですね。