「ウェイトシミュレーター」をご存知でしょうか?もともとはアメリカ国立衛生研究所(NIH)で開発された、ダイエットのためのオンライン体重シミュレーションシステムで(現在の正式名称は「Body Weight Planner」)、これを予防医学研究者の石川善樹さん(Wikipedia)らプロジェクトチームが日本版にアレンジしたものです。健康情報誌「Tarzan」2015年1/22号で紹介されて大変話題になりました。このシミュレーターは、「リバウンドしないダイエット」を目指して徹底的に考え抜かれており、ダイエットをしようと考えている全ての方におすすめできるものです。
使い方は非常に簡単。今の体重、目標体重、目標日数(30日または60日)などを入力して「シミュレーション」ボタンをクリックするだけ。「減量期」「維持期」それぞれに、一日当たりにどれくらいカロリーを今より減らしたらよいかということを教えてくれます。後はそのプランに従ってカロリー制限をするだけですが、決して無理なプランは提案しません。それでも意志の弱い方向けに、ダイエット習慣が確立されるのを助けてくれる「セルフモニタリングシート」も用意されています。百聞は一見に如かず。以下の画面イメージをクリックすると「ウェイトシミュレーター」ページに飛びますので、是非試してみてください。もちろん無料ですのでご安心ください。
ここでは、「ウェイトシミュレーター」のどんなところが優れているのか、なぜリバウンドしないと言えるのか等々、ダイエット理論としても非常に興味深い「ウェイトシミュレーター」のコンセプトについてご紹介します。
1キロ=7200kcalは間違い
ダイエットでは、昔から「1キロ=7200kcal」という」単純な公式が信じられてきました。例えば、3kg減量したいなら7200kcal×3=21,600kcal。これを2ヶ月で達成するなら、21,600kcal÷60=360kcalを、1日につき今よりも減らすというわけです。しかし、実はこれには落とし穴がありました。「これは摂取カロリーを減らしても消費カロリーは変わらないという40年以上前の静的モデルに基づいたもの。でも、実際は摂取カロリーを減らすと消費カロリーも減りますから、このモデルの通りに体重も体脂肪も減りません」(石川氏)。ウエイトシミュレーターでは、この摂取カロリーと消費カロリーの相互作用や、筋肉量や脂肪量、水分減少など、体重の減り方に影響するさまざまな要素を加味した、より的確なダイエットプランを作ってくれるのです。
「減量期」と「維持期」を区別したプラン設定
多くのダイエッターが身に染みていることかと思いますが、体重を一時的に減らすことはさほど難しくありません。その何倍も大変なのは、苦労して減らした体重をリバウンドさせずにキープし続けることです。これは、人間の体には、形状記憶シャツのように、減らした体重と体脂肪を元に戻そうという本能的な力があるからです。そこでウェイトシミュレーターでは、「減量期」と「維持期」を区別し、それぞれの時期にどのくらいのカロリーをカットすべきか?ということを教えてくれ、また会員登録をすれば、それぞれの時期に食生活や生活習慣をどのように改善すべきか?というより詳しいアドバイスもしてくれます。
ダイエット期間は1ヶ月か2ヶ月
最新のダイエット理論を採用しているウェイトシミュレーターですが、減量のやり方自体は「摂取カロリーと消費カロリーの収支をマイナスにする」という昔ながらのものです。カロリー収支をマイナスにするには、摂取カロリーを抑えるか、消費カロリーを増やすかのどちらかしかありませんが、ウェイトシミュレーターでは、減量期には食事制限によるカロリーカット、維持期には活動量を増やすことを柱としています。これは、石川氏によれば、「過去の疫学調査で明らかになっている」合理的な体重コントロールの理論とのこと。また、ウェイトシミュレーターでは、ダイエット期間が1ヶ月または2ヶ月と限定的であるのも一つの特徴。人間の食欲は根源的な欲求なので、大幅な食事制限はそんなに長続きしないものですが、これくらいの期間であれば、食事制限も耐えられるのではないでしょうか。また、あまりに無謀な減量プランを立てようとすると却下されるようになっており、その意味でも挫折するリスクは低くなっています。
食事量をほぼ戻してもリバウンドしない
厳しい食事制限を一生続けることはできません。世の中のほとんどダイエットでは食事量を戻すと必ずリバウンドしますが、ウェイトシミュレーターのプランでは、減量期にはそれなりのカロリーカットが求められるものの、維持期にはほぼ減量前の食事量に戻してもリバウンドしないというのが画期的なところです。多くのケースでは1日50~100kcal減らすだけなので、さほど辛くはないでしょう。しかし、何もかもがうまい話はありません。食事量を戻してもよい代わりに、「活動」量を増やす必要があるということはよく覚えておいてください。ただしありがたいことに、必ずしも「運動」である必要はありません。通勤や家事など生活の中で自然に行う軽い活動でも十分で、1日60~70kcal前後ですむとのことです。
習慣化が重要
減量期は食事制限に主眼、維持期には活動に主眼、と前述しましたが、減量期にも活動量を増やすことに取り組む必要があります。これは、食事だけのダイエットはどうしてもハードになりがちだということと、維持期に備えて活動の習慣作りをするためでもあります。しかし、活動量を増やすというのは、ブクブク太ってしまった怠け者の人にとっては一苦労かもしれません。そこで考えてみてください。毎日「歯磨き」をするのを苦労に感じますか?そんなことはないですね。これはなぜかというと、歯磨きは既に習慣になっているからです。一般的には運動などの活動を継続するには「絶対続けるぞ!」という意志の強さが必要と思われていますが、石川氏によると、ある行動を続けるのに意志は約3割しか影響しておらず、人間が行動を続ける原動力は主に「習慣」とのことです。その習慣作りを助けてくれるのが、ウェイトシミュレーターの結果ページからダウンロードできる「セルフモニタリングシート」です。
このシートには、自分が決めた行動をできたかできなかったをチェックするようになっています。そしてこれはパソコンやスマホ上ではなく、紙に書くというのがミソ。人間の心理として、モニタリングを始めると、チェックを入れたいので決めた行動を実行したい思うもの。そして自分に嘘はつけないので、実際にやらないと「できた」というチェックは入れられないもの。こうして決めたことを最低2ヶ月繰り返せば、その活動は無意識に続けられるようになるとのことです。もし「できなかった」とチェックする日があったら、なぜできなかったかを考えて軌道修正しましょう。例えば、雨が降ったのでウォーキングしなかったのなら、雨が降った日には、代わりに何か家の中でカロリー消費できる活動を考えてください。
できない人はその時点でダイエット終了!
これがウェイトシミュレーターのユニークなコンセプトで、管理人も非常に共感するところです。前述のように、ウェイトシミュレーターのダイエットプランでは、減量期には食事を減らすだけでなく、活動量を増やすこともノルマとされています。活動が習慣化するのを助けてくれる「セルフモニタリングシート」のようなサポートツールもありますが、それでも中には、食事制限はできるけれど活動を続けるのが難しいという人もいるかもしれません。そんな人は、活動を習慣化することができないと分かった時点で、ダイエットを終了してください。活動だけでなく食事制限も終了です。これは、決して見放して言っているのではありません。活動が続けられないタイプの人は、減量に成功してもリバウンドする可能性が非常に高いからです。ダイエットしてリバウンドすると、そのたびに筋肉量が減って代謝が下がるので、むしろ太りやすい体質になります。皮肉ではなく科学的に、リバウンドするくらいならダイエットしないほうがずっとマシなのです。
ダイエット成功の目安は半年
これも前述しましたが、人間の体は体重と体脂肪を常にモニターしていて、減少してくると必死に元に戻そうとする働きがあります。しかし、維持期の「軽い食事制限」+「軽い活動」を半年続けると、体内の代謝のスイッチがしぶしぶ切り替わり、減った体重と体脂肪を維持するようになるとのこと。「季節で代謝は変わりますから、季節を2つ超えても体重が維持できていたら、スイッチの設定が切り替わったと思っていいでしょう」(石川氏)。ウエイトシミュレーターのダイエットプランを半年を乗り越えたら、リバウンドしないダイエットはめでたく完成です!