人間の体の60%は水分です。コネチカット大学の研究では、体内の水分がわずか1.5%不足するだけで、体には軽い脱水症状が表れ、気分やエネルギー、知覚能力などが低下することが報告されています。気を付けなければならないのは、水分不足になる原因は、夏の炎天下、汗をかくトレーニング、日頃あまり水を飲まない等、分かりやすいものばかりではないということです。ここでは、水分不足、ひいては脱水症状を引き起こす、意外な14の原因をご紹介します。
スポンサーリンク
糖尿病
「糖尿病持ちの方は脱水症になる恐れがあります。特にまだ自分が糖尿病であることに気付いていない方は要注意です。血糖値が高い場合、体は余分なグルコース(ブドウ糖)を排出しようとし、尿の量が増えます。排尿回数が必要以上に多いとそれだけ脱水の危険性が高くなります。糖尿病の方あるいはその疑いがある方が、喉の渇きや頻尿を自覚している場合は、医師に相談してください」(オハイオ州認定家庭医療スペシャリストロバート・コミニアレック氏)。
生理
「そろそろ来る頃だと思ったら、いつもより水を多めに飲むように心がけてください。代表的な女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンは体内の水分量と密接な関係があり、常に増減を繰り返しています。月経前症候群の症状があるときなどは水分を多く摂るべきです」(コミニアレック氏)。問題はそれだけではありません。「血液には水分が含まれているので、出血量が多い方も注意する必要があります。自覚がある方はタンポンを使って、もし2時間に1回以上交換しないといけない場合は、婦人科医に相談してください」(フロリダ州婦人科医・マリエレナ・グエラ氏)
処方薬
「処方箋や処方薬の注意書きに記載されている副作用をよく確認してください。多くの薬には利尿作用があり、体の水分を奪います。代表的なのは高血圧の治療薬です。また、下痢や嘔吐と記載されているものも、実際にその副作用が生じた場合には脱水に至る恐れがあります」(コミニアレック氏)。これらの症状のいずれかに当てはまるものがある場合、水を多めに飲んでください。
低糖質ダイエット
「糖質(炭水化物)は、水分と共に体内に蓄えられます。よって、低糖質ダイエットをすると体の水分も抜けて、比較的簡単に体重が落ちます。これは一見喜ばしいことですが、体の水分レベルの観点では要注意です。対策としてはオートミール、玄米、全粒粉パスタなど未精製の炭水化物を摂ることで、これらは調理の過程で水分を吸収するので、意識せずに水分補給することができます。炭水化物を全く食べないのは危険です」(栄養士・ジェイミー・マス氏)
ストレス
「ストレスを感じているときは、副腎からストレスホルモンが分泌されます。常にストレスにさらされていると副腎が疲弊し、副腎機能障害を起こすことがあります。副腎はアルドステロンというホルモンにより、体内の水分と電解質の量を調整する働きがあるので、副腎がうまく働かないと、体内の水分と電解質の量が低下します。短期的な対策は水分補給ですが、長期的にはストレスとうまく付き合うことが必要になってきます」(コミニアレック氏)
過敏性腸症候群
「過敏性腸症候群自体というより、その具体的な症状である吐き気や慢性下痢などが脱水を引き起こすことがあります。また、過敏性腸症候群の方は下痢を恐れて水分が多い食べ物を避ける傾向があるので、そうなると脱水を悪化させます」(コミニアレック氏)
トレーニング
「トレーニングでの脱水状態というと、マラソンなどの持久力系スポーツの問題と思われがちですが、実はスタジオ系レッスンやちょっとしたジョギングなど、全ての汗をかくトレーニングに脱水の危険はつきものです。トレーニングが習慣化して、補給する水分量より汗をかく量が多い日が増えるほど、脱水の危険性は高まります。運動の前後は毎回きっちり体重を測り、減った体重分~減った体重×1.25程度の水を飲むようにしてください」(マス氏)
妊娠
妊娠してから胃もたれを感じることがないでしょうか?「これは脱水状態を補うために体が水分を溜めようとしているのが一因です。妊娠中は血液量と心拍出量が増加するので、より多くの水分を必要とします。また、つわりが引き起こす吐き気や嘔吐によっても、脱水は悪化します。つわりがひどい場合はあまり我慢せずに、医師に相談してください」(グエラ氏)
老化
年をとるにつれて、体内に水分を保持する能力と体の水分不足を感知する能力の二つが共に衰えます。つまり脱水状態になりやすく、逆に適切な水分補給をすることが難しくなるということです。水を飲むことをついつい忘れてしまうという方は、ペットボトルに毎日決まった量の水を入れていつも手元に置いておき、必ず毎日飲みきるようにすることをおすすめします。
サプリメント
「”天然”や”自然”と謳っているからといって、いくらでも摂取してもよいということはありません。例えばパセリ、セロリシード、タンポポ、クレソンなどは利尿作用があるので、脱水症状を引き起こす恐れがあります。何らかのサプリメントの服用を検討している、あるいは現在服用している方は、栄養士、主治医、自然療法医などに副作用についてよく確認しておくことをおすすめします」(マス氏)
高地
標高の高いところに行くと、人間の体は呼吸が速くなると共に、排尿を増やすことによって低酸素の環境に順応しようとします。つまり体は通常よりも多くの水分を必要とするので、これを怠ると脱水状態になる可能性があります。
飲酒
「二日酔いで喉が渇いた経験がある人もいるかもしれませんが、仕事帰りの軽い一杯程度でも、体内の水分は大きく減少します。これは、アルコールを飲むとトイレが近くなるからです。人間の体には、「抗利尿ホルモン(ADH)」と呼ばれる、利尿を抑えて体内の水分を溜めておくように働くホルモンがありますが、アルコールにはこれを妨げ、水分を膀胱に送ろうとする働きがあります。また、アルコール自体にも利尿作用があり、体の細胞から水分が失われます(ちなみに酒を飲み過ぎると頭痛がするのは、脳の細胞から水分が失われるためです)。さらに言うと、アルコールを飲んで酔っぱらっていると、喉の渇きや疲労感など、脱水状態の初期症状に気付きにくいという問題もあります」(マス氏)
野菜・果物の不足
三食の食事で毎回お皿半分の野菜を食べると、一日にコップ2杯分の水分を摂ることができます。逆に言うと、極端に野菜・果物が不足している人は、それだけ水分が不足しがちであると言えます。もちろん水分だけでなく野菜や果物にはビタミン、ミネラルなどの大事な栄養素が含まれるので、日頃から不足しないように心がけましょう。
授乳
「授乳とは、言い換えれば自分の体内の水分を外に出すことです。もちろん、単純に水だけでなく、たんぱく質、ミネラル、その他重要な栄養素が、お母さんの体から赤ん坊の体に渡されます。母乳の出が悪い場合は、意識して水分を多く摂り、医師にも相談してみてください。深刻な脱水症状の徴候である可能性もあります」(グエラ氏)