日本人は、世界の他の国に比べて胃がんの割合が高いという統計があります。それもそのはず、一見ヘルシーなイメージがある和食ですが、実は毎日の食生活で摂り入れる塩分量がとても多いのです。漬け物や煮つけ、塩焼きや塩辛など、和食に欠かせない料理にはたくさんの塩が使われており、また味噌や醤油などの調味料にも塩分が多く含まれています。作る時の分量や選ぶメニューなどに十分気を付けないと、どうしても塩分過多になってしまうでしょう。
では、日本の伝統的な食事を美味しくいただきつつ、なおかつ塩分調整をして胃がんを予防することはできるのでしょうか。アメリカがん研究財団と世界がん研究基金からの報告によると、食生活に注意すればある程度のがん予防はできるそうです。ここではその方法をご紹介します。
そもそも塩分が多い食事はなぜ胃がんになるの?
私たちが食べた物は、いくつかの臓器が調和良く働いて消化しています。食べた物が適量であれば、問題なく消化、吸収、あるいは排出されますが、大量に摂取した場合、体に悪影響を与えることがあります。例えば、塩分を摂り過ぎると、食道を通り胃に届いた塩分は、胃の表面の粘膜細胞を刺激して破壊してしまいます。
通常、胃の粘液質は食べ物に含まれている発がん物質から胃を保護していますので、それが破壊されてしまうと無防備になり、発がん物質が細胞組織の奥深くまで入り込んでしまうのです。胃の粘膜細胞は一生懸命修復作業を行いますが、既に細胞には発がん物質がとりついてしまっているので、その細胞が盛んに分裂を繰り返しているうちに、細胞のがん化を促進してしまうという皮肉な結果になります。
そうならないために、1日の塩分摂取量は6g以下に抑えましょう。これはかなり厳しい目標ですが、料理の方法を工夫すれば達成は可能です。
減塩しながら美味しく!塩分量をカットする料理法とは?
塩分を控えた食事のデメリットは、薄味になってしまうこと。健康を考えて減塩食を頑張っても長続きしにくいのは、味に物足りなさを感じるからかもしれません。確かに、単に塩分を減らしただけでは美味しくないでしょう。そこで、減塩しながら美味しく感じる工夫をご紹介します。
- 出汁を使う時は、通常よりも濃くしましょう。ある実験で実証済みですが、15%減の塩分でも3割り増しの出汁であれば、減塩前と同じ美味しさを感じることができます
- みそ汁などは具をたくさん入れて汁の量を減らしましょう。特に、根菜類や芋類、油揚げや豆腐、こんにゃくなどをたくさん入れると味が十分に出ますし、実質的にも減塩になります
- みそ汁の具にはワカメやホウレン草、ジャガイモなどカリウムを多く含む食材を使いましょう。カリウムには塩の主成分であるナトリウムを体の外へ排出してくれる働きがあります
- 食材を塩茹でするのでなく、できるだけ少量の油で炒めて、香辛料やハーブで味付けしましょう
- 合わせる食材にコクのあるものや、香りの強いものを加えましょう。互いに味が染み込んで満足感もアップします
精製塩と天然塩!減塩食にはどちらを使ったほうが良い?
精製塩と天然塩はどちらも同じ海水が原料ですが、つくり方が異なるため、含まれる塩分も違ってきます。
精製塩のほうはイオン交換膜という装置を使ってつくられており、99%が塩化ナトリウムの結晶でできている純粋な塩です。一方、海水を煮詰めてつくる天然塩は、塩辛さの主成分である塩化ナトリウムだけでなく、塩化カルシウムや塩化マグネシウム、塩化カリウムも含んでいます。つまり、塩化ナトリウム以外の成分が含まれている分、天然塩のほうが、相対的にナトリウムを摂る量が減りますので、減塩になるでしょう。
さらに、白菜などの漬け物を2種類の塩で漬けて食べ比べてみたところ、ほとんどの人が天然塩のほうが美味しいという結果でした。甘みや苦み、酸味や辛味を含んでいる天然塩は、甘みがありまろやかさを感じます。料理には、減塩しながら料理が美味しく仕上がる天然塩がオススメです。