「筋トレを続けているのに効果が出ない」「自分のやっている筋トレが正しいのかどうか分からない」「筋トレを始めたいけれど何からやればよいか分からない」という方がいると思います。効果が出ない筋トレは時間の無駄で、やりがいがないので続かないばかりか、悪くすると怪我の危険性すらあります。ここでは、筋トレしても効果が出ない14のケースと、正しい筋トレ方法をご紹介します。
毎日筋トレしている
「筋トレは毎日やらないと効果がない」と思っていませんか?これは全くの誤解です。筋トレをすると筋肉が疲労し、筋繊維が損傷した状態になります。筋肉を成長させるには、十分休養させて、エネルギー源となるアミノ酸(タンパク質)やブドウ糖(炭水化物)を与えてやらなくてはなりません。こうすることにより、筋肉は元のレベルより太く強くなります。この仕組みを「超回復」と言います。毎日筋トレをすると、筋肉が十分回復していない時点で刺激を与えることになるので、効果が出ないだけでなく、筋肉が過労でレベルダウンしたり、怪我をすることにもなりかねません。「超回復に要する時間は48時間から72時間と言われており、一回筋トレをしたら次の筋トレまで2日空ける必要があります。だから筋トレは週に2~3回が適当なのです」(NSCA公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト・スポーツ&サイエンス代表・坂詰真二氏)
1セットの回数が多すぎる
毎日腹筋を100回やって、頑張った気になっていませんか?実は15回以上できる筋トレにはほとんど意味がありません。この理由は、筋肉を成長させるには、少しキツいと感じる負荷を筋肉に与える必要があるということです。筋肉は与えられる刺激に徐々に順応していきますが、その刺激は強すぎても弱過ぎても効果は出ません。「少しキツい」というレベルがちょうどよいのです。毎日100回腹筋をやっている方は、最初はキツかったかもしれませんが、今では結構普通にこなせているのではないでしょうか?もしかしたら最後の数回はキツいかもしれませんが、それまでの90数回を考えると、決して効率のよいものではありません。ここで成長しているのはどちらかというと筋肉の持久力であって、筋肉が太く強くなる、いわゆる「筋肥大」ではありません。「筋肥大させるには、重りを10回持ち上げてもあと2回持ち上げられるくらいの力、つまり筋肉が出せる力の70~80%程度の負荷を与え、これに抵抗しながら10回前後、動作を反復することが必要です。最適な負荷がかかっていれば10回以上反復できないはずです」(坂詰氏)
体脂肪を減らす努力をしていない
正しいやり方で筋トレしさえすれが、効果が出ないということはありませんが、「効果が見えない」と思っている人はいるかもしれません。例えば「こんなに腹筋を頑張っているのに6パックができない」と思っている方は多いのではないでしょうか?残念ながら腹筋運度だけでは6パックはできません。「ざっくり言えば体脂肪が10%以下にならなければ、6パックがハッキリ見えるようになりません。人間の腹筋はもともと6パック(実際は8パック)に分かれているのに、その上の脂肪が邪魔をして見えていないだけなのです」(坂詰氏)。体脂肪を減らすには、食事制限をするか、有酸素運動をするか、いずれかの方法で、摂取カロリーよりも消費カロリーが多い状態にして脂肪を燃やしてやる必要があります。ここで注意しないといけないのは、ただ脂肪だけ減らそうとすると、一緒に筋肉も落ちてしまうということです。筋肉が落ちると基礎代謝が低下して、かえって体脂肪が減りにくい体になってしまいますし、体の見栄えも悪くなります。食事制限をするにても有酸素運動をするにしても、筋トレを並行して行うのがおすすめです。
筋肉痛になるまで筋トレしないと気がすまない
たしかに筋肉痛になると「やった感」はあるのですが、筋力アップに筋肉痛は必ずしも必要ありません。筋肉痛は必要以上に筋肉を酷使した証拠。筋肉は損傷からの回復に十分な休養と栄養が必要であることは前述しましたが、筋肉痛があると計画的なトレーニング実行が難しくなったり、オーバートレーニングになったりする恐れがあります。そもそも、筋肉には「短縮性収縮(物を持ち上げる動き)」と、「伸張性収縮(ブレーキをかける動き)」がありますが、筋肉痛は主に「伸張性収縮」で起こります。例えば自転車や水泳で、ペダルや水を押す動きは「短縮性収縮」です。つまり筋肉痛はほとんど起きないはずなのですが、競輪選手の脚や水泳選手の上半身は筋肉隆々です。これは筋肉の成長に筋肉痛が必要ないことを証明しています。トレーニング後は、筋肉に少し張りがあるな、と感じるくらいがちょうどよいです。
炭水化物が不足している
筋肉の成長にたんぱく質が必要であることはよく知られています。しかし炭水化物となるとどうでしょうか?近年の低糖質ダイエットブームの影響で、炭水化物は悪という風潮もあります。しかし、実は筋肉の成長には炭水化物も非常に重要です。筋肉は、周囲からアミノ酸を摂りこんでたんぱく質に合成して「筋肉をつくる」作業と、逆にアミノ酸に取り出し「筋肉を分解する」作業が同時進行しています。この「筋肉の分解」を少しでも食い止める努力が大切です。筋肉の分解を食い止めるために必要なのが炭水化物。体内に蓄えられている炭水化物(グリコーゲン)が少ないと、筋肉内のたんぱく質がアミノ酸に分解されてしまい、肝臓で糖に変えられてエネルギー源として使われてしまうのです。「筋トレの2~3時間前後にしっかり食事をして炭水化物を摂っていれば、筋トレ中も血糖値が適度に保たれ、筋肉の分解が進みません。食後4時間を経過して筋トレを行う場合は、1時間前にハムサンドや鮭入りのおにぎりなど摂るようにするとよいでしょう」(坂詰氏)
筋トレを1セットしかしていない
やらないよりマシだろうと、筋トレを1セットだけやってやった気になっていないでしょうか?筋トレは一種目につき3セット行うのが効果的です。実は、筋肉は人間が100%の力を出していると感じているときでも、本来持っている力の30~40%(≒1/3)程度しか発揮していません。発揮する筋力の大きさは、収縮した筋繊維の数で決まっており、分かりやすく言うと、鍛えたいある箇所の筋繊維が仮に100本あるとしたら、1セットだけではその100本のうち1/3の33本しか働きません。これを3セット行うことによって、100本全ての筋繊維を働かせてやることができるのです。
夜寝る前に筋トレをやっている
人間の体は自律神経によって支配されています。自律神経には、興奮時や運動時にメインで働く交感神経と、安静時や睡眠時にメインで働く副交感神経があります。交感神経が働いているときは、心拍数は高く筋肉の血流も増えるので運動に向いていますが、副交感神経が働いているときは、栄養を消化吸収したり運動後の細胞を修復させるのに向いています。寝る直前はまさに副交感神経が働く時間なので筋トレには不向きです。「しかも筋トレをすると交感神経が興奮するために、寝付きが悪くなったり睡眠を浅くして成長ホルモンの分泌がうまくいかず、筋肉づくりにマイナスになります」(坂詰氏)。とは言え、忙しい現代人にとってトレーニング時間の確保は難しい問題。「現実的な方法の一つは、19時頃に夕食をを食べてしばらく休養した後の、21~22時位に筋トレを行う方法です。ほどよくエネルギー源が残っていて、まだ交感神経も働いている状態です」
体幹トレばかりやっている
もちろん体幹トレーニングを否定するものではありません。体幹、特にお腹は意識しやすい部分でもあり、お腹を凹ませたい気持ちは分かるのですが、前述のようにお腹を鍛えたからといってお腹が凹むわけではなく、体脂肪を減らさなくてはなりません。そこで、体脂肪を減らすためには、実は体幹よりも太腿など下半身のほうが重要です。「筋肉は1kgで1日30kcalのエネルギーを消費します。つまり筋肉量に比例して消費するエネルギーは大きくなります。下半身の筋肉量は全体の半分以上を占める大きい筋肉であるため、体脂肪を減らすには下半身の筋肉を鍛える優先順位が高いのです」(坂詰氏)。また、体脂肪の問題だけでなく、姿勢を整えたり運動能力を高めるためにも下半身は重要です。家に喩えるなら、言わば体幹は柱。柱はもちろん重要なのですが、それよりも重要なのは基礎・土台です。基礎が傾いていたら柱を真っすぐに立てることもできません。
「部分痩せ」を誤解している
「二の腕を細くしたい」「ふくらはぎを細くしたい」等、”部分痩せ”に興味がある女性は多いと思います。しかしこれには非常に多くの誤解があります。まず「腕を引き締めるためには腕の筋トレをすればいい」と思っている方がいるかもしれませんが、筋肉は筋トレをすると太くなるだけで、逆に細くなることはありません。とは言え、引き締まった腕を手に入れるには筋トレは必須。引き締めたい箇所の筋肉を鍛えつつ、周囲の脂肪を減らすことが必要になります。そこでもう一つある大きな誤解は、体脂肪が特定の部分だけ減るということはありえないということです。「すべての脂肪細胞はほぼ均等に分解され、遊離脂肪酸という形で血液中に放出されます。筋肉はこれをエネルギーとして利用するのであって、一部の箇所の脂肪を直接使うわけではないのです」(坂詰氏)。ところが興味深いことに、それでもある意味で部分痩せは可能です。「体の各部位にある脂肪細胞の数は遺伝的に決まっています。二の腕、お腹、お尻、ふくらはぎのように脂肪細胞の多い部位もあれば、手の甲、ヒザ、脛のように少ない部位もあります。全身の脂肪細胞は均等に使われるので、脂肪細胞に多い部位ほど”減り幅”は大きくなります」(坂詰氏)。つまり、例えば手の甲の脂肪が1mm、お腹の脂肪が10cmあったとしたら、1mmが0.5mmになるよりも、10cmが5cmになったほうが、減った割合が同じでもたくさん減ったように見えるということです。つまり結論としては、部分痩せしたかったら、体脂肪を減らす努力と筋トレを並行して行えばよいのです。
重りをスピーディーに動かしている
筋トレをするときに、動作を速くすればするほど筋肉を鍛える効果があると思っていないでしょうか?それは全くの逆効果です。筋トレは、抵抗を受けながらある程度ゆっくり動かないとなかなか効きません。これには二つの理由があります。一つは、ウエイトを速く持ち上げようとすればするほど、フォームが崩れて、鍛えたい筋肉以外を使いやすくなってしまうということ。もう一つは、速く行うと勢いが生じてしまい、筋肉が力を発揮するのは一瞬だけ。あとは惰性で動いてしまい効率が悪くなるということです。「適正なスピードは、重りを1~2秒かけて上げ、2~4秒かけて下ろすこと。腕やふくらはぎなど重りの移動距離が短い運動ならば1秒で持ち上げて2秒で下ろす、スクワットや腕立て伏せのように移動距離が長い運動ならば、2秒で持ち上げて4秒で下ろすようにするとよいでしょう」(坂詰氏)
いつも同じ負荷で筋トレをしている
例えば腕立て伏せは身近な筋トレの一つで、取り組んでいる方も多いと思います。しかし、筋トレ初期の段階では筋肉は大きくなりますが、筋力が向上すればするほど、筋肉を肥大させる効果は薄くなります。筋肉を肥大させるには、「1回だけ反復ができる(2回目は上がらない)最大の重さ」の70~80%程度の重量を、6~10回程度反復するのが最も効果的と言われています。例えば、ベンチプレスで1回だけ50kgを挙げられる人は、35~40kgを6~10回挙げるということです。腕立て伏せの場合、最初は数回がしんどかったのが、慣れてくれば50回でもできるようになります。しかし前述したように、回数をこなすトレーニングは筋持久力を高める効果はありますが、あまり筋肥大は期待できません。そこで、通常のフォームで腕立て伏せが50回できる人は、足をイスに乗せる、片足を上げる、左右交互に体重をかける等して、なるべく10回できるかできないかの負荷になるよう工夫してみてください。
筋トレ前にストレッチをしている
ストレッチには大きく分けると、「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」、2つの方法があります。「静的ストレッチ」は、ヨガのようにじっくりと一つ一つの筋肉を伸ばして静止するもので、一般的にはストレッチと言えばこちらをイメージする人が多いでしょう。一方「動的ストレッチ」とはラジオ体操のように腕を振ったり、脚の曲げ伸ばしをして、静止せずに筋肉の伸び縮みを繰り返すものです。筋トレ前にしてはいけないのは「静的ストレッチ」です。ではなぜいけないのでしょうか?「静的ストレッチには伸ばした筋肉の興奮を静めて緊張を取り去る効果と、安静時に働く副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる効果があるからです。筋トレ前に静的ストレッチをすると、心身はダラリと弛緩してしまい、筋肉が発揮できる力が低下し、その結果効果も落ちてきます」(坂詰氏)。静的ストレッチは、筋トレ後のクールダウンの中でじっくり行うのが懸命です。筋トレ後は筋肉の温度が上がって筋肉が伸びやすく、また心身の緊張を取り去り疲労回復を促進してくれます。
ブルブルマシンを使っている
いわゆる「ブルブルマシン」とは、電極が入ったベルトを腰に巻いてブルブルと振動させる類のダイエットグッズです。結論から言えば、ブルブルマシンはマッサージ器具であり、筋トレの効果はゼロです。「『腹筋運動数百回に相当』などと表現されていますが、数百回できるということは、一回あたりに筋肉が出す力が非常に弱いということ。筋肉を太く、強くするには、負荷に対抗する強い力を10回前後出す必要がありますので、何十回、何百回も繰り返し弱い力を出したところで筋肥大や筋力アップは望めません」(坂詰氏)。楽をして筋肉をつけることはできないということです。
筋トレ前に走っている
筋トレ前にウォーミングアップとしてジョギングを取り入れている人も多いようです。しかし、10分程度ならともかく、30分以上のジョギングはかえって筋トレの効率を下げることになります。「筋トレの主なエネルギー源は糖分で、ジョギングでは糖分と脂肪の両方を使います。ジョギングはエネルギーをたくさん使うので、一時間も走ると体の糖分が底をつき始めます。筋トレの前にジョギングを長時間やってしまうと、筋肉はエネルギー不足となり、筋肉を肥大化させるために必要な大きな力が出せません」(坂詰氏)。また、筋トレの前に走ると疲れてしまい、筋トレでフォームが崩れるやすくなるという問題もあります。フォームが崩れると効果が薄くなるばかりか、下手をすると怪我をする恐れもあります。逆に、筋トレ後は成長ホルモンが分泌され、体脂肪が分解されます。よって筋トレ後に有酸素運動をすると効率的に体脂肪が燃えてくれます。ジョギングを筋トレを両方行い、双方の効果を最大に引き出したいのなら、筋トレ⇒ジョギングの順で行いましょう。