食習慣で違う胃の特徴
胃は、心臓の下あたりからへそのあたりの、体の真ん中よりも左に位置します。お腹が減っている空腹時はぺたんこですが、食べ物を食べると内腔が広がり、厚い胃壁がへそよりも下に下がるほど伸びます。
欧米人と日本人では体型に違いがありますが、興味深いことに、胃の形にも特徴の違いがあります。肉食中心の欧米人は、胃自体は比較的小さいのですが、胃壁の厚い「牛角型」と言われています。食べ物から栄養分を吸収する胃は、栄養価が高いものを食べるとそれに比例して胃壁も丈夫になり、胃の運動が活発になって元気になるからです。一方、穀類中心の日本人の胃は、長時間胃にとどまる穀類の重みで下がった、縦に長い「フック型(鉤状型)」です。
食習慣で違うかかりやすい潰瘍
胃がかかりやすい病気にも、それぞれ特徴があります。牛角形の胃の欧米人は、胃の運動が活発ですが、胃酸の分泌も活発で、胃酸過多の状態になりやすくなります。その胃酸が、胃とつながっている十二指腸に流れやすくなるため、十二指腸潰瘍ができやすくなります。一方、フック型の胃の日本人は、フックの内側にあたる胃角部に歪みができて、血液の流れが悪くなり、胃潰瘍ができやすくなります。
このように、長年の食習慣の違いは、胃の形や運動の仕方だけでなく、かかりやすい病気にも関係します。実際、食生活の欧米化が進んでいる日本の都市部では、胃潰瘍よりも十二指腸潰瘍の発症頻度が上回るという近年予測データがあります。胃を健康に保つために、自分の食習慣を定期的に見直してみると良いでしょう。
潰瘍ができる原因
胃潰瘍は中高年に、十二指腸潰瘍は20代〜30代に多く、いずれもかかりやすいのは男性で、女性の約2倍を占めています。潰瘍ができる原因の一つには、食生活の欧米化が挙げられますが、その他にも、胃粘膜に住みつくピロリ菌の感染があります。実際、検査を行ったところ、胃・十二指腸潰瘍になった人の約9割がピロリ菌に感染しています。ピロリ菌の完全除菌を行えば、胃潰瘍の80〜90%、十二指腸潰瘍の約100%を再発防止できます。
他の原因として、腰痛や頭痛、関節痛や風邪の治療などに使用される非ステロイド系消炎鎮痛薬の服用があります。これらの薬は、胃粘膜のただれや胃酸分泌亢進を促すからです。加齢を重ねると、どうしても薬剤の服用が多くなったり、胃粘膜の防御機能が低下するので、胃潰瘍になりやすくなると言えます。
他の原因としては、肉体的・精神的な強いストレスがあります。また、不規則な生活や多忙、人間関係の悩みや喫煙、お酒の飲み過ぎや暴飲暴食なども原因になります。生活リズムを整えて、なるべくストレスを減らすよう心がけましょう。
潰瘍に効く食事とは
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、再発を繰り返すことが多いと言われます。実は、胃を守ってくれる胃の粘膜は、自分の胃液で消化され、再生し、というサイクルを繰り返しており、この再生力が弱くなると潰瘍になります。そこで、粘膜の再生力を上げるためには、栄養価が高く消化の良い食事を摂ることが必要です。具体的には、肉や魚、大豆製品など、胃の粘膜の材料となるたんぱく質を多く食べましょう。
逆に、控えたほうがよいのは、揚げ物や油たっぷりの炒めものなどの脂質です。これらは、消化が悪く胃に滞留する時間が長くなります。また、胃粘膜を刺激し胃酸分泌を促してしまう香辛料やコーヒー、お酒やタバコ、濃い味付けの物や塩辛い物、炭酸飲料ものもよくありません。その他、極端に固い物や冷たい物、熱い物も、胃に負担をかけるので避けたほうがよいでしょう。
また、一日3回規則正しく食事をし、就寝前2〜3時間は食事をしないようにしましょう。仕事熱心で真面目な人ほどなりやすいと言われています。自分にとってちょうど良い加減を見つけて、なるべく気楽に行うように心がけましょう。
胸やけやげっぷにご用心!
食べ過ぎや飲み過ぎで胃に負担をかけてしまうと、胃もたれや胸やけを引き起こしたり、胃の中に溜まったガスが一気に出てしまうげっぷなどの不調を招くことがあります。食事による一時的なものであればさほど心配はいりませんが、食事と関係ない場合もあります。
実際、最も多い胸やけの原因は、逆流してしまった胃液が食道の粘膜を荒らしてしまうこと(逆流性食道炎)です。また、熱いものを食べた時にしみるような感じや胸がつかえたような感じがする場合は、食道癌などの兆候かもしれません。
また、興味深いことに、胃腸の病気のサインとしてあげられるものの一つに口臭があります。胃腸の働きが低下するとげっぷが起きやすくなり、またげっぷの匂いも口臭もきつくなるからです。本来、口臭の主な原因は虫歯や歯槽膿漏ですが、どちらも心当たりがないという方は、胃の病気を疑ったほうがよいかもしれません。
いずれにしても、一時的ではなく長期に渡り胃の不調を感じる場合は、食道や胃に何らかの異変があることが考えられます。胃腸の健康のためにで、早めに検査を受けましょう。