健康診断の問診時に「あと3キロ体重落としましょうか」などと言われた経験はありませんか?「お腹周りを測って基準値からちょっと外れただけで、体の中まで分かるのか!?」と疑問に思う方もいるかと思いますが、実はこれが「メタボ」から「生活習慣病」に進行するのを止める第一関門なのです。ここでは、メタボ検診の意義や内臓脂肪を溜めこむことの危険性についてご紹介します。
メタボと判定される基準
2008年度から40歳~74歳の人を対象に始まった「メタボ健診」は、通常の健康診断のいくつかの項目を使い、内臓脂肪の蓄積度合いを診断することを目的としています。その中の第一条件となるのが「腹囲」といって、おへそ周りの計測するもの。男性は85cm以上、女性は90cm以上が指導の対象となります。
他に血糖値、血圧、脂質(中性脂肪やHDLコレステロール値)の基準が設けられており、腹囲を含めて3つ以上当てはまるとメタボ、2つ以上でメタボ予備軍と判定されます。
内臓脂肪が注目される理由
例えば血圧が高めだと「高血圧症」と診断されたり、血糖値が高い時には下げるように指導されたりしますが、それぞれの値が「やや高め」くらいだと「経過観察」となり放置されてしまうことが少なくありません。
しかし近年になって、血圧、血糖値、血中脂肪の値の影には実は同じ原因が潜んでいて、それぞれに影響を及ぼしているのではないかと考えられるようになってきました。それが内臓脂肪です。内臓脂肪が体内に蓄積されると、やがて確実に血圧や血糖値、血中脂肪の値が上昇します。一つ一つは軽度であっても複数の項目が重なることで結果的に動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるのです。
内臓脂肪の正体
ではそもそも「内臓脂肪」とは何なのでしょうか?私たちが口にする食べ物は、消化されて栄養が腸から吸収され、体を動かしたり生命を維持するためのエネルギーとして使われます。そして血液中に流れている余った栄養素を「白色脂肪細胞」と呼ばれる細胞が取り込みます。これが内臓脂肪や皮下脂肪の正体です。
この白色脂肪細胞は、いざと言うときのエネルギー源として脂質を蓄えています。ではなぜエネルギーになるための脂質が体に悪いのでしょうか。
それは、脂肪細胞はエネルギーを貯める一方で、代謝を調節する物質などさまざまなホルモンを分泌しているからです。脂質を溜め込みすぎると、ホルモンが過剰に分泌されたり、逆に分泌されにくくなったりして、代謝機能に悪影響をおよぼすのです。そのホルモンの分泌量は、皮下脂肪より内臓脂肪の方が量も多く、影響も大きいといわれています。
内臓脂肪の付きやすい人
内臓脂肪の量と生活習慣病の関係を調査すると、肥満かそうでないかに関わらず、内臓脂肪の量に比例して生活習慣病の危険性が高い事が分かります。つまり、肥満であってもそれが皮下脂肪によるものであればある程度は大丈夫で、逆に痩せていても内臓脂肪が多いと生活習慣病の危険性がグッと増すのです。
一般的に「やせの大食い」「手足に対してウエストが太い」「ダイエット・リバウンドを繰り返している」「運動不足」などの人が、内臓脂肪型肥満の可能性が高いと言われています。
子供も要注意
若い人たちにとってもメタボは他人事ではありません。年々、子どもの肥満率が上昇しているのです。
脂肪細胞の数は、胎児期や思春期に大幅に増え、20歳頃には決まってしまうという研究もあります。また、メタボになってから15~20年で心筋梗塞などを起こす確率が高くなる、というデータもあり、仮に15歳でメタボになった場合は30~35歳で発症するという計算になるのです。
内臓脂肪は減らしやすい
このように大きな危険性が潜むメタボですが、実は意外と簡単に解消することができます。その解消法とは、食生活の改善と適度な運動です。
なぜ内臓脂肪がたまるのか?それは、使うエネルギーよりも取り込むエネルギーが多いからです。脂質も糖質も、そしてたんぱく質も、食べ過ぎれば脂肪として蓄積され続け、白色脂肪細胞が膨らんで内臓脂肪が増加します。よって、まず考えられる対策は、まず摂取エネルギーを減らす、つまり食べ過ぎる習慣を改善することです。そして同時に、消費するエネルギーを増やすために、適度な運動を心がけましょう。
しかも、幸いなことに内臓脂肪は皮下脂肪よりも減らしやすい脂肪です。ある研究によれば、体重が5%減ると内臓脂肪が20%減るともいわれています。
日頃から体脂肪計や体組成計などを活用して自分の体重や体脂肪率を把握するとともに、年に一度はメタボリックシンドローム健診を受診しましょう。自分の体と向き合うことが、生活習慣を整え、メタボの予防、改善につながります。