めっきり暑くなってきましたが、皆さん体調を崩してなどいませんか?夏の暑い季節には、流行しやすいいくつかの感染症があります。それぞれの特徴を知って、早めに対処しましょう。
「プール熱(咽頭結膜熱)」と「アデノウイルス」~風邪の感染症
夏風邪の代表と言われるのが「咽頭結膜熱」です。プールで感染することが多いため、「プール熱」とも呼ばれています。原因菌は「アデノウイルス」で、アデノウイルスによる感染症の一つがプール熱です。プール熱は幼児から小学生がかかることが多い感染症ですが、アデノウイルスによる他の症状は大人でも見られます。
プール熱(咽頭結膜熱)の症状とは?
プール熱には三大症状があります。「喉の咽頭の粘膜が赤く腫れること」「眼が充血すること(まぶたが腫れたり、目ヤニがあらわれたりもする)」「38~40℃の高熱が出ること」です。必ずしも三つの症状が全部そろうとは限りませんが、夏風邪の症状があらわれていて眼が赤く充血している場合、プール熱の可能性が高いと言えるでしょう。主な症状は約1~2週間で治ります。
アデノウイルスによる症状とは?
アデノウイルスによる感染症は発症率が高く、インフルエンザウイルスやエンテロウイルスに次いで高くなっています。アデノウイルスには約51もの型があり、型によって起こる症状に違いがあります。プール熱(咽頭結膜熱)は一般的に3型が多いのですが、1・4・7・14型もあり、特に最近7型による重症化が多く見られます。他には、呼吸器感染症(3・7型)、出血性膀胱炎(11型)、流行性角結膜炎(8・19・37・53・54・56型)、胃腸炎(31・40・41型)などの症状もアデノウイルスによって引き起こされます。
原因ウイルスは?
すでに述べたように、原因ウイルスは「アデノウイルス」です。直径が約80nm(1nm=100万分の1mm)、構造は正二十面体で、表面に12本のアンテナ様突起があります。
感染経路は?
飛沫感染の他、便に触れた手などから口に入る接触・糞口感染があります。潜伏期間は5~7日間です。
対処法は?
抗炎症作用のある内服および点眼、解熱剤の投与をしながら回復していきます。また、プール熱の場合は症状が消えても約1ヶ月は便からウイルスが排出され続けるため、その間はプールに入ることはできません。
予防法は?
プールから上がったら、シャワーを浴び、目を洗い、うがいをしましょう。また、家族が感染してしまった場合、二次感染を防ぐために、ハンカチやタオルの共用を避け、こまめな手洗いを心がけましょう。
「手足口病」と「ヘルパンギーナ」~皮膚や粘膜の感染症
「手足口病」と「ヘルパンギーナ」も夏に流行する感染症で、水疱ができる、発熱があるという共通点があります。一般に、乳幼児に多いですが、大人もかかることがあります。主に皮膚で増殖し、基本的に軽症ですが、稀に重傷の合併症を起こすこともあるでしょう。
手足口病の症状とは?
「手足口病」は、手のひらや足の裏、舌・頬の粘膜など口の中に、水疱(水ぶくれ状の発疹)がでる病気です。水疱は直径2~5mmくらいで痛みを伴います。口の中にできる水疱は、破れてただれてしまうこともありますが、手や足にできる水疱は、皮膚の深いところにできるため、破れたりかさぶたになったりすることはありません。約3分の1の人は38℃前後の熱がでますが、通常は1~3日ほどで下がります。また、発疹は1週間以内に治ります。
ヘルパンギーナの症状とは?
「ヘルパンギーナ」は、口の中、特に上顎や喉に痛みを伴う水疱ができます。水疱は直径2~4㎜くらいで痛みを伴います。水疱は破れてただれた後、一週間くらいで治ります。また、38~40℃の熱がでますが、1~3日ほどで下がります。手足口病との違いとしては、ヘルバンギーナは「手や足に発疹が出ない」「ほぼ必ず発熱し、熱は手足口病よりも高い」ということが言えます。
原因ウイルスは?
どちらもエンテロウイルスによって起こります。エンテロとは「腸管」を意味しており、エンテロウイルスとは腸管で繁殖するウイルスの総称です。含まれているのは、コクサッキーウイルスA群やB群、エコーウイルスやポリオウイルス、エンテロウイルス68~72型などです。
感染経路は?
飛沫感染や便に触れた手などから口に入る糞口感染です。手足口病の場合、直接感染もあります。原因となるウイルスであるエンテロウイルスは喉や腸で増殖します。その後、血液にのってそれぞれのウイルスが目的とする臓器に移動し、再び増殖して炎症を起こします。潜伏期間は2~5日です。
対処法は?
水分補給を行い、鎮痛剤を投与して安静を保ちます。口の中に痛みを伴う水疱ができると食事がしにくくなりますので、流動食など食べやすい形で摂りましょう。症状が治まった後でも、2~4週間は便にウイルスが出ることがありますので、排便の後はよく手を洗うようにしましょう。
予防法は?
エンテロウイルスには多くの種類があり、それぞれの遺伝子が微妙に変化したいくつかのウイルスの型があります。そのため、一度感染してもその免疫が他の型にはあてはまらず、何度でも感染する可能性があります。予防のためのワクチンもないため、手洗いやうがいの励行など、一般的なウイルス感染の予防法を心がけましょう。
「急性出血性結膜炎」と「流行性角結膜炎」~目の感染症
夏に多い目の感染症が、「急性出血性結膜炎」と「流行性角結膜炎」の2つの結膜炎です。子どもに限らず大人でも起こります。
急性出血性結膜炎の症状とは?
「急性出血性結膜炎」は、最初は、眼の白目の部分を覆っている、膜の下にある小さい血管が破れて出血することから始まることが多いでしょう。この出血は眼球結膜下出血と呼ばれており、小さな点状のものから広範囲に渡るものまであります。白目が真っ赤になるので心配になりますが、一週間くらいで自然に治ります。他の症状として、眼がゴロゴロする感じの違和感や痛み、目ヤニや耳の前にあるリンパ節の軽い腫れなどがあります。これらもやはり一週間前後で治るでしょう。
流行性角結膜炎の症状とは?
「流行性角結膜炎」の症状の特徴は、目の充血や痛み、ゴロゴロする感じの異物感や目ヤニ、まぶたの腫れなどです。また、耳の前にあるリンパ節の腫れや、押すと痛みが生じる圧痛もあらわれます。流行性角結膜炎は症状が長引くことが多く、短くとも一週間以上、長ければ二週間~1ヶ月くらいまで続くこともあります。
原因ウイルスは?
急性出血性結膜炎の場合、エンテロウイルス70型やコクサッキーウイルスA24変異株が原因で起きます。流行性角結膜炎の場合は、アデノウイルス8型などが原因で起きるでしょう。
感染経路は?
どちらも接触感染です。潜伏期間は急性出血性結膜炎が約1日と短いのですが、流行性角結膜炎が1~2週間くらいと長いでしょう。
対処法は?
治療は抗炎症作用のある点眼薬になります。また、結膜炎の症状がある間は感染力が続くため、医師の許可がおりるまでプールに入ることはできません。
予防法は?
目ヤニなどに触れた手から感染することが多いため、ハンカチやタオルの共用は避けましょう。使い捨てのティッシュやペーパータオルを使うのがオススメです。また、こまめな手洗いを心がけましょう。
まとめ
手洗いはあらゆる感染症を予防するための最も有効な手段です。石鹸を使い、爪の間、指の間、手の甲、手首などもよく洗い、洗った後は清潔な乾いたタオルで水分をしっかりと拭き取りましょう。また、栄養状態が悪いと感染症にかかりやすくなり、たんぱく質が不足すると免疫細胞や抗体が減少してしまいます。栄養バランスよく、免疫力を高める食事を心がけましょう。
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