加齢とともにでてくる股関節の痛み。身体的に辛いのはもちろんですが、ストレスが表情や姿勢といった見た目にも影響を与えて、老けて見えてしまうでしょう。また、進行すると日常生活にも支障をきたす恐れがあるので、早めに対処する必要があります。ここでは、関節が痛む人の特徴別に、その原因と、解消法や対処法をご紹介します。
変形性股関節症の人
変形性股関節症とは、骨盤のくぼみ部分に接する太腿の骨の先端部分にある軟骨がすり減ったり、消失しているために痛みが生じる病気。これは、特に日本人に女性に多く、主に遺伝が原因と考えられています。
変形性股関節症の問題は、対処が遅くなりがちということです。初期段階では、軟骨がすり減っているのですが特に痛みがないため、たいていの人は病院に来ることはありません。中期段階になると、長時間の立ち仕事や運動などの時に股関節の痛みを感じるようになりますが、やはり痛みを我慢してしまう人が多いです。そして、痛みはだんだん大きくなり、ついには寝ている時に寝返りを打つことすらできなくなるほどの痛みが生じて、やっと病院を訪れる人が多いのです。しかし、この終期段階では股関節の軟骨がほとんどなくなって、骨の変形が生じていることが多く、大規模な手術が必要になってしまいます。
遺伝による股関節症は残念ながら予防することができませんので、股関節の痛みに気づいたら整形外科を受診することをオススメします。また、ストレッチや筋トレなどで下半身の筋肉が鍛えておくと、股関節の痛みが生じるような負荷から体を守ることができます。
股関節の脱臼や亜脱臼をしたことがある人
乳幼児期に多い股関節のトラブルの一つとして、股関節の脱臼や亜脱臼が挙げられます。これは、乳幼児期は関節がまだしっかりと固定されていないためです。例えば、赤ちゃんはがに股の状態が自然ですが、オムツ交換をした時や抱っこをした時などに足を伸ばしたままの状態で行ってしまうと、いつの間にか脱臼や亜脱臼になってしまうということがあります。また、前項でご紹介した変形性股関節症の遺伝的なリスクがある赤ちゃんほど、股関節の脱臼や亜脱臼になりやすいとも言われています。
乳幼児期に一度股関節の脱臼や亜脱臼を経験すると、たとえその時にはきちんと治っていたとしても、40代頃に股関節の異常を感じることが多いと言われています。あるいは、股関節の脱臼や亜脱臼は経験していなくても、乳幼児期の歩き始めが遅かった人や、ある程度成長してから「歩き方が変だね」と指摘されたことがあるような人も、股関節異常のリスクを抱えていると考えられます。股関節の痛みを感じたらすぐに整形外科で診てもらいましょう。
肥満の人
体重が重い人ほど股関節にかかる負担が大きいので。股関節を痛めるリスクも大きいと言えるでしょう。自分の理想体重を知るにはBMI(BodyMassIndex)(体重(Kg)÷{身長(m)×身長(m)}のが有効です。一つの目安として、BMIの値が22であれば、最も生活習慣病になりにくいとされていますので、股関節のトラブル予防の指標ともなります。
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肥満に当てはまる方は、少しづつ体重を減らすよう努力しましょう。逆に、痩せすぎの方も、筋肉や骨密度の維持、軟骨の再生が難しくなりますのでよくありません。いずれの方も、基本的には栄養バランスの良い健康的な食事をし、適度な運動習慣を保つことによって理想体重に近づくことができるでしょう。
いつも重い物を持つ仕事の人
重い物を持つと、腕を使っていたとしても、下半身にかかる体重はその分増えてしまいます。言ってみれば、その分体重が増えた状態と同じこと。運送業や建設業などで、日常的に重い物を持ったり運んだりしている人、特に常時25Kg以上の重量物を扱っている人は股関節への負担が大きいため、痛みが生じやすくなるでしょう。
股関節の痛みを感じた時は、悪化させないためにも、まずはすぐに整形外科へ行きましょう。股関節の痛みの原因が仕事にあるとはっきりしたら、配置転換や転職を含め仕事を変えることを真剣に検討してください。仕事を変えることは簡単ではないでしょうが、日常生活に支障が出てからでは手遅れです。
激しいスポーツをしていた人
若い頃に激しいスポーツをしていた人は、跳んだり跳ねたり素早い動きをするなど、股関節に日常生活の数倍の負荷がかかっています。受けたダメージはある程度修復されますが、関節に受けたダメージは確実に蓄積され、歳をとってから何らかの症状となって現れます。
そのような方は、タンパク質やカルシウム等、骨に良い栄養素を多めに、バランスの良い食事を摂りましょう。激しい運動はなるべく控えるのが望ましいですが、もし今でも激しいスポーツをしているのなら、運動中に関節や筋肉にかかるかなりの負荷を抑えるため、運動前後のストレッチや運動後のクールダウンをしっかり行いましょう。
妊娠時に体重が増え過ぎてしまった女性や高齢出産の女性
肥満の方は体重が股関節に負担を与えることを述べました。その意味では、妊娠期の女性も同様です。短期間で体重が急増するので、股関節には思わぬ負担が加わりますし、出産後も育児期間は子どもを抱きかかえることが多くなるため、さらに重い負荷が加わるでしょう。
妊娠や出産を経験している女性は、経験していない女性よりも股関節の痛みが出やすくなります。特に、妊娠期の体重の増加が著しい女性ほど股関節へのダメージは大きくなります。また40〜50代の高齢出産の女性も、股関節が受けるダメージの修復や再生力が弱くなるため痛みが生じやすいと言えます。
妊娠期の体重管理はしっかりと行い、急激な増加を招かないように気を付けてください。また、育児中はなるべく座るか寄りかかった状態で抱っこするようにし、股関節への負担を軽くしましょう。子どもと一緒に散歩するときは正しい姿勢で歩行するよう心がけ、関節に良い食事を摂りましょう。