「グルグルグルグルコサミン♪」のCMソングでお馴染みの「グルコサミン+コンドロイチン」サプリがあります。商品名はあえて明記しませんが、舞の海や中田喜子さんが膝回し運動をするCMに見覚えがある方は多いと思います。いかにも膝に効くかのように宣伝していますが、なんと、このサプリを飲んでも膝には効かないということをご存知ですか?ここでは、グルコサミンがなぜ膝に効かないか、その理由をご紹介したいと思います。
膝関節が痛くなる理由とは?
高齢者が気にする不具合の代表的なものが、膝などの関節痛です。関節痛の原因はさまざまですが、一番多いのは、関節の老化から起こる変形性関節症と言われています。これは、歳をとるにしたがって軟骨がすり減り、加重の衝撃を吸収できなくなるからです。
グルコサミンやコンドロイチン、ヒアルロン酸は、たしかに関節を滑らかに動かすための主要成分です。そこで、グルコサミンやコンドロイチンを摂取すれば、軟骨が増え、関節の動きが滑らかになって、痛みもなくなるはず、と思うかもしれません。
サプリが体に吸収される仕組みとは?
しかし、考えてみてください。サプリをはじめ、人間が食べたものは体に吸収されますが、そのまま吸収されるわけではありません。たんぱく質や脂肪、炭水化物などの栄養素は、そのままでは固まりが大きすぎるからです。そこで、胃や腸で吸収できる小さい単位にまで分解されてから吸収されます。これがいわゆる「消化」と呼ばれるプロセスです。
グルコサミンが膝の痛みに効果がない理由とは?
つまり、人間の体は、食べたものがそのまま細胞などの一部になるようにはできていません。
もし仮に、錆びた機械に油をさすように、コンドロイチンやヒアルロン酸を膝関節に直接注入すれば、多少の効果はあるでしょう。しかし、サプリに含まれているグルコサミンやコンドロイチンは、吸収されやすいようにすでに小さな分子になっており、もはやその時点で軟骨細胞を再生させる効果はありません。
結論としては、グルコサミンやコンドロイチンを飲んでも、関節の動きが滑らかになったり、痛みがなくなったりすることはないのです。
実際、2012年の米国リウマチ学会で、グルコサミンに膝関節症の発症を予防する効果はないと報告されました。グルコサミンを毎日摂取したグループと摂取しないグループとで、膝関節症の発症状態を調べたところ、両者に差は見られなかったそうです。
健康食品メーカーのトリック
また、そもそもの話ですが、この商品はあくまで「サプリメント」。つまり「栄養補助食品」であって「医薬品」ではないので、医療効果はないのです。
この商品に限りませんが、サプリメントのCMで「私が元気なのはこれのおかげです」などと言っている画面の隅っこに、見えないような小さな文字で「これは個人の感想であって、効能を謳うものではありません」と書いてあるのを見たことがある人は多いでしょう。
グルコサミンとはいったい何なのか?
ではグルコサミンとはいったいどんな働きのある成分なのでしょうか?
実は、「グルコサミン」とは、その名の通り「グルコース(ブドウ糖)」と「アミン(アミノ基)」が結合したもの。簡単に言えば、カロリーの源となる「ブドウ糖」に毛が生えたようなものなのです。ちなみに「アミン(アミノ基)」とは、「アミノ酸(=たんぱく質が分解されたもの)」を構成する要素ではありますが、アミノ酸そのものではありません。また、「ヒアルロン酸」の原料も同様にブドウ糖やアミノ基です。
言い換えると、「軟骨」は、グルコサミンやヒアルロン酸からできていますが、これらの原料はブドウ糖です。つまり軟骨細胞は、ブドウ糖からできていると言えます。
「ブドウ糖」とは、「糖質(炭水化物)」が消化されてできたもので、人間の主要なエネルギーです。一般の人は、一日に300~400gのブドウ糖を摂取していると言われています。ところがサプリに含まれているブドウ糖はわずか1~2gという微々たるもの。このことからも、グルコサミンサプリが膝の痛みに効果がないことが分かりますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?企業のCMは大変巧妙にできています。このサプリも、散歩や運動を楽しみたい方、登山・旅行がお好きな方、日頃忙しく動かれる方などにおすすめなどと言ってはいますが、痛みに効くなどとは一行も書かれていません。大事なのは、正しい知識を持つこと。自分が賢くなるしかないのです。