認知症は脳の異変が原因の病気です。認知症には「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「血管性認知症」「前頭側頭型認知症」の4つのタイプあり、タイプによって「食べたことを忘れる」「食べない」「食べ過ぎる」など、さまざまな食事の問題が出てきます。ここでは、認知症のタイプ別に、楽しく食事してもらうための対応方法や注意点などをご紹介します。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、割合は全体の約5割を占めます。特徴的な症状は、最近の出来事を忘れてしまう記憶障害です。食事に関しては、食べたことを忘れてしまったり、箸などの食具の使い方がわからなくなったり、食べ物以外を口にするようになったりといった問題が生じます。
しかしながら、食欲は十分にありますし、美味しく食べることができますので、「さっき食べたばかりなのに」と思っても、食べたいというときはしっかり食べさせてあげましょう。その際は、食事をよく噛んでゆっくり味わって食べさせることが重要です。それがなるべく長く動ける体を維持し、寝たきりの状態になるのを遅らせることにもつながります。
アルツハイマー型認知症の食事ケアの方法
さっき食べたばかりの食事のことを説明しても思い出すことは難しいですし、何度も食事の支度をするのも大変です。このようなときは、簡単な軽食を出してあげましょう。混ぜごはんや炊き込みごはんのおにぎりなどを冷凍しておいて、食べる分だけ解凍すれば、つくる人の負担も軽くなります。
インスタントスープにそうめんや春雨を入れるなどの即席でできる料理も便利です。箸が使えなくなったら、スプーンで食べることができる肉団子と野菜のスープや、ポテトやかぼちゃのサラダもおすすめです。スプーンを使うことも難しくなった場合は、一口サイズの手で食べることができる手まり寿司なども食べやすいでしょう。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症はアルツハイマー型に次いで発症数が多い認知症です。発症すると、脳細胞や抹消自律神経細胞に、異常たんぱく(=レビー小体)がたまり、その結果、運動機能が低下して姿勢が傾いたり、内臓機能が低下して便秘になったりします。また、視覚野の働きが低下して存在しないものが見えるようになったり、昼間でも眠くなることがあり、気分が沈みやすく、食事が進まない日があります。
食事に関しては、その日の体調に応じて量やメニューを変えたり、視覚や嗅覚への配慮をして美味しく食べることができるよう工夫してあげましょう。
レビー小体型認知症の食事のケア方法
便秘解消のために、食物繊維が豊富な食材を積極的に取り入れましょう。発酵食品も効果的です。納豆やキムチ、みそや漬け物、ヨーグルトや乳酸菌飲料、塩麹や甘酒などを活用しましょう。また、嗅覚や味覚が低下した場合は、出汁を濃いめにとったり、香りづけにカレー粉を使うと食が進みます。
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血管性認知症
血管性認知症は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」や、血管が破れる「脳出血」など、脳血管の障害が原因で発症します。症状は、脳内の血管の場所や障害の程度によって異なります。
食生活に関しては、血管に良い食材で美味しく食べる工夫が必要です。麻痺がある場合は、粘りやとろみのある食材を使うと食べやすくなりますし、介護食具を使用するのもよいでしょう。障害となった機能以外は正常に機能しますので、最低限のサポートがあれば、今まで通り楽しく食事ができるはずです。
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血管性認知症の食事ケアの方法
脳梗塞の再発を防ぐために、血液をきれいにする食材を積極的に取り入れましょう。血栓を防いでくれる良質の油は、オレイン酸が含まれているオリーブ油や、α-リノレン酸が含まれているしそ油・えごま油・亜麻仁油、DHPやEPAが豊富なさばやいわし、さんまなどの青魚です。
これらの油と食材を活用して、蒸し焼きや天ぷら、マリネなどにしてみましょう。飲み込みにくいという症状がある場合は、野菜をポタージュにしたり、チャーハンにあんかけをかけたり、煮込み料理にはソースを多めにかけると食べやすくなります。
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前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、脳の中の前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ壊れていくことによって、さまざまな症状が出てくる認知症です。前頭葉に障害が起こると急に怒り出すことがあるため、周囲の人は驚くことが多いでしょう。また、側頭葉に障害が起こると言葉の意味がわからなくなって、会話が難しくなります。
いずれもしても、症状が進むと感情や行動の抑制がきかなくなります。満腹中枢にも影響が及ぶため、食欲が異常になり、特に甘いものを大量に食べる傾向があります。好きに食べさせるのは心配になりますが、食べる幸せを感じていると前向きにとらえて温かく見守りましょう。
前頭側頭型認知症の食事のケア方法
肥満防止のため、たくさん食べても太りにくい食材を活用しましょう。糖質ゼロの甘味料と寒天を使ったヘルシーなデザートをつくったり、食物繊維で腹持ちのよいドライフルーツや、噛みごたえがあり満足感を得られやすい雑穀米のせんべいを活用しましょう。
また、味の濃いものや特定の調味料を好む傾向もあります。例えば、何にでもケチャップをかけるというようなこともありますが、これはあまり気にしなくても構いません。食事には食物繊維多めを心がけると共に、切干大根やきくらげなど噛みごたえのある食材を加えることでカロリー過多を防ぎましょう。
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まとめ
いずれのタイプでも、食事を一緒にするときは、美味しそうに食べ、笑顔で接することが大切です。家族がイライラすると、認知症の人は責められていると感じるからです。心地よく、安心して食べることができるように楽しい食卓を心がけましょう。