糖尿病の患者数は年々増加しています。厚生労働省の調査では、糖尿病は病院に通院する理由の第3位(1位は高血圧症)。また、比較的高齢者に多い病気ですが、近年では若い世代でも発症率が上昇しています。ここでは、糖尿病の食事療法と運動療法や、日常生活の中で糖尿病を改善する工夫についてご紹介します。
体を動かす
糖尿病のリスクを高める要因はいくつかありますが、その中でも「肥満」は大きな要因として挙げられます。肥満を改善・予防するために、なるべく多くのエネルギーを消費するよう心がけましょう。いきなり激しい運動をすることは難しい方が多いと思いますので、日常生活の中でこまめに体を動かすだけでも十分です。体を動かすことに慣れてくると、運動も積極的に取り組めるようになります。無理をしない程度に、通勤や買い物はなるべく車を使わず、歩く習慣をつけてみましょう。
体を動かしたときの消費エネルギー量は、運動の強さと持続時間、体重によって異なります。実は、運動自体で消費されるエネルギー量は、それほど多くありません。しかし、食事療法と併せて行うことによって、糖尿病の治療には効果を発揮します。また、運動を続けることで、筋肉量が増え、基礎代謝(呼吸や内臓の動きなど、生きていくために必要な活動に使われるエネルギー量)が高まります。基礎代謝が高まると、安静時にもより多くのエネルギーが使われるため「太りにくい体」を作ることにつながります。
食材の買い置きを控える
生活スタイルによっては、食材を買い置きせざるをえないこともあるでしょう。しかし、食事療法を正しく続けるためには、食材の買い置きを控えることも有効です。とくに、お菓子や、加工食品は必要以上に家に置かないように注意します。買い置きがあると、ついつい食べたくなってしまいます。その誘惑に勝つのは簡単なことではありません。
「低カロリーのものなら多少間食してもよいのではないか?」と思う方もいるかもしれませんが、どんなにカロリーが低い食べ物でもカロリーは0ではありません。また、カロリーが低い食べ物は満足感が低く、少量では満足できずに結果的に食べ続けてしまう、ということになりがちです。
それだったら最初から買い置きせずに何も食べないほうがよいのです。もし非常食として、加工食品などを保存する場合は、すぐに取り出せないような場所にしまっておきましょう。
食事療法と運動療法
糖尿病の治療の中心は食事療法です。まず、病状や年齢、体格、活動量から1日に必要なエネルギー量が指示されます。毎日の食事は、それにしたがって内容や量を調節します。血糖値をコントロールするには、単純に摂取エネルギーを減らせばよいというものではなく、栄養量や食事のバランスにも気を配る必要があります。
食事療法は、必ず医師や管理栄養士の指示に従っておこない、病状が改善しても継続します。治療の効果を高めるため、食事療法と組み合わせて行われるのが運動療法です。病院では念入りなチェックを行ったうえで、病状や年齢、体調にあわせてどんな運動をどのくらいすればよいのか決めます。
糖尿病の治療に運動が有効なのは、運動により細胞が血液中のブドウ糖を取り込む際に必要な「受容体」の働きがよくなるためです。その結果、ブドウ糖を効率よくエネルギーとして使えるようになり、血糖値の低下につながります。また、前にのべたように運動で肥満を改善することが大事です。例えば、内臓脂肪からはインスリンの働きを妨げる物質が分泌されますが、運動で脂肪を減らすことができれば、インスリンの働きも高まることになります。
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