がんと食事には極めて密接な関係があります。「がんと栄養に関するあらゆる研究で、野菜中心の食事にはファイトニュートリエントと呼ばれる抗がん作用のある栄養素やその他さまままな有益な化合物が含まれていることが明らかになっています」(マギル大学 がん生化学博士・Richard Béliveau)
毎日の食事には5~9種類の野菜や果物を摂るように心がけましょう。その中には特に以下の6種類を取り入れると効果的です。
ブロッコリー
「全てのアブラナ科の野菜(カリフラワー、キャベツ、ケール)には抗がん作用のある成分が含まれていますが、その中でもブロッコリーはスルフォラファンがたっぷり含まれる唯一の野菜です。スルフォラファンとは、体を守る酵素を増進させ、発がん性のある物質を無毒化することができる強力な化合物です」(ジョンズ・ホプキンス大学 科学博士・Jed Fahey氏)。また、ミシガン大学のマウスを使った近年の研究では、スルフォラファンは、腫瘍を増殖させるがん幹細胞を抑制させる効果があることも分かっています。
このがんに効く:乳がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、膀胱がん
おすすめの食べ方:研究によればブロッコリーはたくさん食べれば食べるほどよいということが分かっています。サラダはもちろん、オムレツの具、ピザのトッピングまで日常のさまざまな料理に加えましょう。
ベリー類
「全てのベリー類はファイトニュートリエント(抗がん作用のある植物性栄養素)が含まれています。特に黒ラズベリー(※ブラックベリーではない)にはアントシアニンが高濃度で含まれており、前がん状態の細胞の成長を抑え、腫瘍に栄養を供給する血管の成長を防ぐ働きがあります」(オハイオ大学医学部博士・Gary D. Stoner)
このがんに効く:結腸がん、食道がん、口腔がん、皮膚がん
おすすめの食べ方:ベリーの濃縮パウダーもよいですが、1/2カップ程度のベリーを毎日食べることでも十分効果があります。
トマト
トマトには、赤色色素カロテノイドの一つであるリコピンがたっぷり含まれています。米医学雑誌「Nutrition and Cancer(栄養とがん)」の研究では、リコピンは、子宮がん細胞の成長を止めることが報告されています。厚生労働省の調べでは、2013年の子宮がんによる死亡者数は6033人です。
このがんに効く:子宮がん、肺がん、前立腺がん、胃がん
おすすめの食べ方:トマトは熱せられることによって、体が吸収できるリコピンの量が増えることが分かっています。トマトソース、トマト煮、卵とトマトの炒めなど、火を通して食べることをおすすめします。
くるみ
女性ホルモンの一つであるエストロゲンが乳がん発生と密接なつながりがあることは広く知られていますが、エストロゲンは、乳がん細胞の中にある”エストロゲン受容体”と結合すると、がん細胞の増殖を促進します。「くるみに含まれる植物ステロールと呼ばれる脂質は、エストロゲン受容体をブロックし、がん細胞の増殖を抑える働きがあります」(マーシャル大学 医学部博士・Elaine Hardman氏)
このがんに効く:乳がん、前立腺がん
おすすめの食べ方:スナック感覚でそのままポリポリと食べればOKです。Hardman氏の研究では、一日約30gのくるみを食べることで効果があることが報告されています。
にんにく
「一般的な食品添加物の一つ硝酸塩は、胃や腸でニトロソアミンと呼ばれる発がん性物質を生成することが知られていますが、にんにくに含まれる成分はニトロソアミンの生成を抑える働きあります」(マギル大学 がん生化学博士・Richard Béliveau)。事実、アイオワ州の女性を対象にした健康調査では、日々の食事でにんにくを多く食べている女性は、ほとんど食べない女性に比べて結腸がんのリスクが50%低くなることが明らかになりました。
このがんに効く:乳がん、結腸がん、食道がん、胃がん
おすすめの食べ方:お好みの量のにんにくをつぶして、熱いトマトソースに加えるとよいでしょう。にんにくはつぶすことによって、アリシンと呼ばれるさまざまな効能がある成分が発生します。
豆類
ミシガン州立大学の研究で、黒豆と白インゲン豆をラットに食べさせたところ、結腸がんの発生率が大幅に減少したことが分かりました。これは一つには、豆類を多く含む食事は腸内環境を改善する短鎖脂肪酸を増加させ、高濃度の短鎖脂肪酸はがん細胞の増殖を抑える働きがあるからだと考えられています。また、Crop Science(作物学)誌の研究では、乾燥豆がラットの乳がんの予防に効果があることが報告されました。
このがんに効く:乳がん、結腸がん
おすすめの食べ方:乾燥でも水煮でもよいので、1週間に数日100g程度の豆を食べる習慣をつけましょう。サラダに加えたり、スープや煮込み料理に加えたりすると食べやすいと思います。