「食べることが好きだから運動で痩せたい」と言う人がよくいますが、だいたいそういう人は痩せることができません。そもそも食べることが嫌いな人はいないですし、運動習慣がある日本人は3割にも満たないと言われています。また、運動はできてもせいぜい週2~3回ですが、食事は1日に3回。体型作りに与える影響は運動よりもはるかに食事のほうが大きいのです。大事なことは、無駄なカロリーをどうカットし、栄養バランスをどう整えるかということ。ここでは、『ダイエットは運動1割、食事9割
先に食べたいものを食べる
食べたいものと体に必要なもののミスマッチが栄養の偏りやカロリー過多の元凶です。外食が中心で加工食品を日常的に食べる現代人が不足しがちで摂る必要があるのはたんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維。逆に控えたいのが糖質、脂質、塩分です。
ミスマッチを正すには、控えたい食品のネガティブリストを作るより、摂りたい食品のポジティブリストに従って食生活を計画するのがコツです。人間が食べられるキャパはあらかじめ決まっています。「摂りたいものを先に食べて満腹にすれば、控えるべきものを食べる余裕がなくなるのです」(森氏)。禁止されると精神的なストレスになるというのが一つと、「~を控えよ」と禁欲を命じられると人は逆に無性に食べたくなります。ポジティブに計画すれば、ストレスや無駄な食欲に惑わされることが少なくなります。
たんぱく質を毎食手のひら1枚分食べる
日々の食事で最も優先して摂りたいのは何と言ってもたんぱく質。筋肉、骨、皮膚などの「体」そのものを作るからです。たんぱく質は20種類ものアミノ酸からできており、そのうち9種は体内で合成することができない、いわゆる「必須アミノ酸」で、食事から摂らないといけません。最低の必要量は、体重1kg当たり1.0gだが、運動している人は筋肉を消耗するので、1kg当たり1.2~1.4gは摂りたいところです。
肉類や魚介類は主なたんぱく源ですが、脂質も多く高カロリーなので、あるいは体重を気にして控える方もいるかもしれません。しかし、もし髪の毛が細くなったり、肌が荒れたりしていたら、それはたんぱく質不足のサインです。毎食手のひらと同じサイズの肉類か魚介類を食べると、だいたい体重1kg当たり1.0gの最低基準はクリアすることができます。運動をしている人はそれに卵や豆腐をプラスしましょう。
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糖質は拳1個分だけで十分
「カロリー」になるのは、糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素ですが、日本人は摂取カロリーの6割を糖質から摂っていると言われています。これは明らかに多すぎです。糖質は「糖新生」という反応によって体が最低限の必要量を合成することができますが、かたやたんぱく質には「必須アミノ酸」、脂質には「必須脂肪酸」という、体内では合成することができない大事な栄養素があります。必要なたんぱく質と脂質が不足すると、栄養バランスが乱れる恐れがあります。糖質は1食当たり拳1個分程度で十分。外食でのご飯やパンのお代わり、麺類とご飯のセットメニューなどは避けるべきです。
とは言え、運動するときに使われる主なエネルギー源は糖質なので、運動する方、特に筋力アップやパフォーマンスアップを狙う方は運動前に適度な糖質摂取を心がけましょう。バナナやオレンジなどの果物から摂るのがおすすめです。有酸素運動中心で、なるべく脂肪を多く燃やしたいという方は糖質は控えめに。
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マゴワヤサシイ=高N/Cレート
「N/Cレート」とは、食べ物の総カロリー(Calorie)に対して、ビタミンやミネラルといった栄養素(Nutrition)がどのくらい含まれるかを表した値のこと。コンパクトなカロリーで栄養をバランスよく摂るためには、このN/Cレートが高い食べ物を食べるのが効率的です。
摂るべき高N/Cレート食品は「マゴワヤサシイ」という語呂合わせで覚えましょう。豆類(マ)、ゴマなどの種子類(ゴ)、ワカメなどの海藻類(ワ)、野菜類(ヤ)、魚(サ)、シイタケなどのキノコ類(シ)(シ)、イモ類(イ)の頭文字を並べたものです。逆に、お菓子やお酒などは、栄養価が低くカロリーだけが高い「エンプティカロリー」と呼ばれ、控えるべきです。砂糖、精製度が高い白米ご飯やパン、うどんなどの麺類も、糖質以外の栄養素は非常に少ないので、N/Cレートは落ちます。
海藻、キノコを忘れない
厚生労働省は1日350gの野菜摂取を勧めていますが、実際には男女とも300gしか摂れていないと言われています。野菜をもっとたくさん食べるべきなのは確かですが、野菜さえ増やせば栄養バランスが整うというわけではありません。コンビニのサラダや外食の付け合わせに出てくるキャベツやレタスなどの淡色野菜中心の生野菜や、弁当に申し訳程度に添えられている煮物などでは、十分な栄養は摂れません。野菜ジュースも一時しのぎにはなりますが、一種の加工食品なので、食べ物から直に摂るよりは栄養素のロス率は大きく、N/Cレートはどうしても低くなります。
そこで頼りになるのが海藻類やキノコ類です。どちらも食物繊維が豊富で食べ応えがありますし、野菜に負けず劣らずビタミンやミネラルがきちんと補給されます。総じて低カロリーなのでN/Cレートは高く、カロリーを気にするダイエット時などでも食べられるのが嬉しいポイントです。
加工食品を避ける
人間誰しも食生活にはクセがあります。無意識に食べている間違った食生活のクセを直さない限り、長い目で見ると理想の食生活は身に付きません。逆に、正しいクセが身に付くといちいち意識しなくても栄養バランスが整い、適正体重を保つことができます。大事なのは、生来備わった5つの味覚を正常化することです。糖質を感知する甘味、たんぱく質に反応する旨味、塩分に反応する塩味の3つは必要な栄養素を摂るため、苦味と酸味は毒物や腐敗物を見分けるために発達したものと言われています。
しかし、氾濫している加工食品やファストフードがこれらの味覚を狂わせます。「味覚を狂わせて病みつきになるように作られているからです。病みつき食品を控えるように指導すると、『それでは食べるものがありません!』と訴える方もいますが、そんな人は『逆にチャンスです』と励まします」(森氏)。味覚が正常化すれば、病みつき食品ばかり食べていた人ほど選択肢が増えるので、食生活は楽に正常化しやすいのです。
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“本物”を食べる
糖質の過食はいけないと分かってはいても、カレーライスやラーメンが無性に恋しくなる人は多いでしょう。また、間食にスイーツはダメと言われても好物を完全に断つのは難しいものです。欲望を無理に抑え続けようとするとストレスになるということもあり、森氏は「“もどき食品”を避けて、ストーリーのある本物であればご飯や麺類、スイーツを食べるのは構わない」とアドバイスしています。
そこで、例えばカレーなら化学調味料と塩分で濃く味付けされたレトルトではなく、スパイスを利かせた専門店の本格カレーを、蕎麦ならカップ麺や立ち食いではなく、原料にこだわった老舗の逸品を味わいましょう。スイーツなら、砂糖とトランス脂肪酸で味覚を麻痺させサクサク感を高めた大量生産品ではなく、本物志向のパティシエが精魂込めたケーキを、作り手に感謝しながら大事にいただくのが正解です。それなら味覚が狂うこともないですし、値段もそれなりに張るので毎日のように食べるわけにはいかず、過食も自然に抑えられます。
カロリーオーバーを恐れるな
朝食は青汁のみ、昼食は蕎麦、夕食は玄米菜食で腹八分目…と聞くとヘルシーなように思えますが、この食事には重大な欠点があります。それは絶対的なカロリー不足です。もちろんオーバーカロリーは肥満の元ですが、カロリーが足りなすぎるのも問題です。カロリーが足りないと、エネルギー源である中性脂肪、筋肉や肝臓のグリコーゲン(糖質)とともに、大切な筋肉を作るたんぱく質もアミノ酸に分解され、エネルギー源として使われてしまいます。
さらに付け加えると、太るのが怖いからと言ってカロリーを抑えると食事量が減るので、限られたボリューム内で栄養バランスをとるのが一層難しくなります。カロリーを抑えるよう気をつけるべきなのは現在肥満気味の人(目安は女性なら体脂肪率が30%以上、男性なら20%以上)のみで、それ以外の人は体格と活動量に見合ったカロリーをしっかりと摂りながら、栄養不足を避けるように心がけましょう。
腸内環境の改善を意識しよう
腸管は人体最大の免疫器官で、大腸に棲む腸内細菌の勢力図は体調に大きな影響を与えます。腸内環境を保つために重要なのはまず便通の正常化。そのために重視したいのは食物繊維。食物繊維はほぼ消化されないため、腸管まで届いて腸内環境の改善を助けてくれます。食物繊維には水に溶けやすい「水溶性」と溶けにくい「不溶性」があります。どちらも便通を良くしますが、どちらかと言えば水溶性のほうが腸内細菌で発酵されやすく、腸内を酸性に傾けて善玉菌を優位にし、腸内環境を改善する効果が高いです。水溶性食物繊維は海藻類、キノコ類、根菜、豆類、イモ類などに多く含まれます。
納豆やヨーグルトなどの発酵食品、オリーブオイルや亜麻仁油、ココナッツオイル、アーモンドなどのナッツ類などから良質の植物油を摂取するのも有効です。発酵食品の乳酸菌は腸まで届いて腸内環境を改善し、質の高い植物油は便を軟らかくして排泄を促す働きがあります。
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肝臓を守ることを意識しよう
酒の飲み過ぎが体に悪いことくらい誰でも分かっています。それでもやめられないなら、まずは、糖質が多いビールや日本酒ではなく、糖質ゼロの焼酎やウイスキーなどの蒸留酒の方が太りにくいということを覚えておきましょう。もちろん飲み過ぎは禁物です。アルコールを解毒してくれる肝臓は、代謝の中枢でもあり、飲み過ぎると肝臓がアルコールの処理に追われて代謝機能が低下する恐れがあります。外でも自宅でも、飲むなら高価な本物と決めれば、飲み過ぎにブレーキをかけることができます。
おつまみもひと工夫するとさらに効果的です。アルコールの代謝には、アミノ酸、ビタミンB群、マグネシウム、亜鉛といった栄養素が消費されます。これらを補ってくれるのが前述の「マゴワヤサシイ」。おつまみで刺身、ミックスナッツ、枝豆、海藻やキノコのサラダなどを摂ると、肝臓の働きが助けられます。特にアミノ酸は消費されやすいのでう、飲酒後にはサプリを活用して補う手もあります。
サプリを効果的に活用する
体作りに食事が果たす影響は大きいですが、運動が不要なわけではありません。例えば、いくら肉をいっぱい食べても筋トレをしなければ筋肉は大きくならないですし、いくらアミノ酸ドリンクを飲んでも有酸素運度をしなければ体脂肪は燃えません。とは言え、あまり頑張り過ぎると続かないですし、疲労も蓄積するので、森氏は週2回程度のトレーニングを推奨しています。
そこで、運動と栄養補給をセットで考える視点が必要です。運動で消費するのはカロリーだけでなく、たんぱく質(アミノ酸)、ビタミン、ミネラルなども失われます。トレーニング後の疲労を避け、休養後に超回復で体力を向上させることを考えるなら、これらの栄養を速やかに補うべきです。栄養素は食事から摂り入れるのが理想的ですが、運動後すぐに食事が取れない場合はプロテイン(パウダー)や、マルチビタミン&ミネラルなどで補うのが効果的です。サプリに頼るマイナス面よりも、失った栄養素をタイミングよく摂るプラス面のほうがはるかに大きいと言えます。
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